逆襲者達。
びびる・ゲイツ。
彼は、非常に善良な殺人鬼だ。
彼がゲームで得た資金の殆どは、英国内の孤児院への寄付金となっている。
彼は、子供が好きだ。
ともすれば、その一言だけで世間様からは白い目で見られてしまいそうなものだが、彼の場合はその限りでは無くなる。
それほどまでに善良。
外から見ると、完全無欠の善人様なのだ。
だが、そんな彼にも欠点がある。
その欠点が、彼が天国に向かうのを妨げてしまうような圧倒的欠点。
「ほぉ…、お前ら良い度胸だ。」
ゲイツの目の前には、四人の襲撃者。男女二人ずつ。襲撃される側の人間がいきなり前に出てきたため、彼ら襲撃者はとっさに前衛が、後衛を庇う。チームにおいて、当り前の行動。セオリー通りの、何気ない行動。
だが、ゲイツの前ではその行動が裏目に出てしまう。
「ッ!!!ユリ!下がって!!!」
前衛と思しき青年が、後衛の女性に声をかけた。
「よし、お前らカップルだな!!違うと言ってももう知らん!!!お前らはカップルだ!!!!」
びびる・ゲイツ。
彼の唯一にして、最大の欠点。
それは、リア充が大嫌いな事であった。
ゲイツはその巨躯からは想像もできないほど素早く前衛に詰め寄り、相手の頭を目掛けて剣を横薙ぎに振るった。
パン。
おおよそ人の体が発するとは思えない音を残して、前衛の青年の頭が爆ぜた。
ゲイツのステータスは、素早さ及び攻撃力に重きが置かれている。
レベルもかなり高く、そんな彼が全力で剣を振りぬくと、人間の頭くらいなら爆ぜてしまう。
スキル等ない【キリングフィールド】だが剣を全力で振りぬくという、それだけの行為に対しゲイツは技名と思しきものをつけていた。
曰く。
「秘剣、リア充爆発しろ。」
ふざけた名前だが、実際に爆発させられる側からすれば溜ったものではない。
又ゲイツ自身もそれがふざけた名前だと理解しているのだが、止める気もない。
そんなふざけた名前を付ける、ふざけた奴に相方を殺される奴の表情を見るのが楽しい。
そんな、これまたふざけた理由で今日も彼は『秘剣』を繰り出すのだった。
「キョージぐっ!!!」
残された後衛の女性が、今しがた爆散した恋人と思しき人間の名前を叫ぼうとするが、声が最後まで出ない。
「そんなに心配しなくても、スグに彼の所へ行けるネ。」
その女性が最後に聞いたのは、優しげで、無慈悲な女の声。
最後に見たのは、自分の首から映えた刃だった。
一瞬、一瞬で二人の仲間が死んだ。
残された二人の襲撃者は、恐慌状態に陥りながらも本能に促されるまま逃走する。
そこに麗しい愛情等存在しない。無様にも生き残ろうとする二人の人間が居るだけだった。
もちろん、殺人鬼達が其れを見逃すはずもない。
数十秒後、森に男女の悲鳴がこだました。