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We love PK!  作者: ケレンコフ
第一章。
10/11

思い出す者。

番外編風味なゲイツの思い出話です。


そして………

二度とスマホじゃ書かん!!!また上げちゃったじゃんバカぁ!!!!

その日、ホームにはゲイツとあーちゃんと呼ばれる少女の二人しか居なかった。


軍麗とヤマザキは揃ってリアルで用事が有るらしく、ログインしてない。


「ゲイツさん、お茶が入りましたよ。」


「ん、おぉ!あーちゃんありがとう!!」


赤毛の威丈夫が、相好を崩して礼をのべる。


デレデレ中年。本気で誰得な光景である。


ともすれば「何あのオヤジ、キモいんだけど。」なんて、OLに給湯室で陰口を叩かれかねないその中年に対し


「いえいえ、どういたしまして。」


と、笑いかける少女はさながら天使の様である。


「いやー、あーちゃんはいい子だなぁ。よし、街に出よう。おじちゃんが何でも買ってあげよう!!」


デレデレ中年、ヒートアップ。


ともすれば「お巡りさん、アイツです!」と、善良な市民に通報されてストレートに豚箱にチェックインしてしまいそうな表情。


「いえいえ!大丈夫です大丈夫です!」


と、犯罪フェイス中年の提案を少女が拒否する。


勿論、嫌悪感からではない(多分)。

街に二人で出掛けた際に中年から仕掛けられるであろうプレゼント攻勢に、自分が耐えられないであろうと判断した為だ。


(とってもいい人達なんだけどなぁ。)



趣味で他人の命を奪う最低の存在であると言えるこの男は


(お父さんって、本当はこんな感じなのかなぁ。)


彼女にとって、父親のような存在なのだ。


(ふふふ、じゃあ軍麗さんはお母さん。ヤマザキさんはお兄ちゃんかな。)


「おーい、あーちゃーん。」


「え?は、はい!」


少女は幸せな考えに身を任せて、ゲイツの言葉を聞き逃してしまって居たらしい。


「ひょっとして、つまんない!?俺と居ると退屈!!??」


「え!?えぇっ!!??」


「おじちゃんショック!おじちゃん超ショック!!超おじショック!!!」


「い、いや、あの」


「うわーん、あーちゃんに嫌われちゃう!!!おじちゃん泣いちゃう!!!」


みっともなく取り乱す中年、びびる・ゲイツ。見苦しすぎる光景だった………


「えぇっと………」


ともすれば、「………。」なんて、汚物を見るような視線を投げかけられかねない状況。

広い心の持主である少女は、目の前の中年に泣きやんで貰うべく一つの提案をした。


「そ、そうだ!!私、ゲイツさんのお話が聞きたいな!!」


「えぇ!?」


そんな少女の提案に、今度は中年が慌てる。


(え、えぇ!?お話!?なんか有ったか!?あーちゃんが楽しめそうな話………)


彼はネトゲ廃人。コミュ障の上に、人生経験も豊富とは言い難い。

………いや、無い事も無いのだが、12の少女に話すような内容ではない。


「おぉ、そうだ!!」

そんな一日の多くを仮想空間で過ごす男が話せる事は、やはり仮想空間での出来事。

世間から隔絶していると言っても過言ではない男の感覚は、やはりどこかずれていて。


ともすれば「そんなお話、教育上宜しくないザマス!!!」と、PTAの教育ママが三角眼鏡を煌めかせながらのたまいそうな。

そんな、仮想空間でのお話を、彼は始めるのであった………



…………………。

……………。

………。



八年前、【キリングフィールド】内。



ホーム内の噴水のオブジェクトに腰を掛けていたゲイツは、昨日からずっと広場を眺めていた。

その顔は無気力そのもの、その目は正に死んだ魚の目だった。


一昨日の夜、彼は恋人に手ひどく振られていた。

帰宅した彼が目にしたのは、もぬけの殻になっていた自宅。

明るい笑顔で迎えてくれるはずの恋人の姿は無く、目に映ったのは床に寂しく放置された置手紙。

そこには、姿の見えない恋人からの、目を引くような美しさは無いが、素朴で何時も優しい最愛の婚約者からの、メッセージが残されていた。


彼はどうやら浮気をされていたらしい。間男は彼ら二人が勤めていた会社の上司だった。

そんな間男が多額の借金を抱えてしまい、恋人曰く「罪深いと分っていても、抑えられない愛の衝動」故にゲイツが彼女との将来の為に溜めていた結婚資金(及び生活費)で、その借金を返済した事。

「身を焦がすような情熱」の中、二人で「許されない愛の逃避行」に出る。

そんな内容が、胸糞悪くなるような自己擁護の謝罪と共に綴られていた。


最愛の相手と、財産を突然失ったゲイツは混乱しながらも周囲の人間に、彼女の行方を聞き回った。

共通の知人、彼女の実家、彼女の勤め先、一緒にプレイしていたネットゲーム仲間………



その全てが空振りに終わった。


茫然自失の状態でじっと広場を、いや、虚空を見つめる男。

其れが、今のゲイツだった。


「若いの、昨日も此処におらんかったか?」


今や生きる屍と化したゲイツに、声がかかる。


ゆっくりと顔を上げた彼の視界に、二人の老人の顔が映る。


「何じゃ?若いのに暗い顔しおって。」


「ちょっとおじいさん、いきなり失礼ですよ!!」


方や人懐っこい雰囲気の好々爺。方や優しげな雰囲気の老婆。

如何にも夫婦然とした二人だ。


今のゲイツにとってその二人の姿は、まるで自分が失くしてしまった未来を連想させてしまう。

自分達も、こんな風に一緒に年をとって行くはずだったのに………

そんな風に考えてしまい、ついつい顔を反らすゲイツ。


その様子を見た老人は


「何じゃ何じゃ、失礼な。………ははーん、さてはお主振られたのぅ?」


ゲイツの心にストレートを放った。しかもクリティカル。


傷口に塩を塗りこまれる形になったゲイツは


「ちょっと!おじいさん!!ごめんなさいね、この人ったら………あら?あらあら」


「………ぐっ、すっ………」


二人が見ている前で、涙腺を崩壊させることになった。







続く。

何か、長くなりすぎそうなので一旦切ります。

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