帰り道がわからない
ほほを伝って落ちた涙で、濡れてしまった手の甲がきもちわるい。
たぶん帰ってきてから30分くらいたった。ずっと、ぼやけた視界で、健康とはお世辞にも言えない少し青白い自分の握り拳を見つめていた。生ぬるい涙が水たまりみたいになっていた。
「大人なのに」
泣きじゃくりを抑えて、ただ一言だけやっと呟いた。
デジャブだ、こんなことが前にもあった、と見飽きた手の甲から今度は天井へと視線をずらす。
確かあの時も、子供みたいにぼろぼろと泣いた。
迷子になった子供みたいに。
どうしてあの時、手を離してしまったのか
君がいなければ、私はひとりぼっちになってしまうのに。