パチンコ編4
銀玉が規則正しく打ち出される。その旋律に銀玉の弾く音が耳を楽しませる。ヘソ釘に入るように右手にも集中力を注ぐ。
打ち出す力加減で、流れが大きく変わりそうな気配に、パチンコは確率の収束もあるなかで、技術の介入要素も含まれることに若干の不安がよぎる。この台は前川の絶対の自信のもとで推薦され、私はそれに従ったのだが、この台の見立ては、技術の面か、それとも台の好不調で選ばれたのだろうか?
前川が自信たっぷりに発した「パチンコは直感よりデータです」という言葉が突き刺さる。と言うことは、この台は技術は要しない、なおかつデータ的にも最高ということなのだろうと、私は負の要素は取り敢えず、意識から離した。
けたたましく台が激しい音を出す。私はその音に、背筋が伸び反射で飛び上がった。パチンコ初打ちの仕草が、それであるのだろうと、童貞を捨てたそれと重ねて笑みが溢れた。パチンカスここに極まれし。そうして己を落ち着かせた。
役物が何度も落ちる。両隣の機微を感じ取る。もしやこれは?と思った瞬間だ。
役物が唸りをあげると「777」と眼前に映し出されていた。
「当たったのか?」まだ座ってから五分も経ってないのだが……。
脳がドーパミンを出す間もなく当たった。
「右打ち→」と表示される。ハンドルを目一杯右に回し、開いた羽根に玉が吸い込まれる。
私は一旦落ち着かせるために、トイレ休憩を取った。
小便器の前で、大当たりの興奮から指先が震えて狙いが定まらない。便器の外にはみ出しそうになったので、慌てて手を離し、股間の動きだけでなんとか事なきを得た。台の情報もほぼ知らない初心者だが、フィーバーの派手な演出が脳を焼いた。
自販機の横に、座りやすそうなソファーがあり、買った缶コーヒーのプルタブを開けた時には手の震えは治まっていた。上を見上げると豪華な照明が設置されていて光のシャワーが降り注いでいる。トイレも掃除が行き届き便器の縁が光っていたことを思い出す。
掃除のおばさんが甲斐甲斐しく拭き掃除をしている。ゴミ箱の処理も手早く行っている。
パチンカスもこの女性の生活の一部に役立っているのだなと、なぜか少し誇らしかった。
このパチンコという空間はある意味で、人生そのものではないかと、思いを馳せながらも、元社長の目線が、当たり前だがまだ残っているのだなあと、缶コーヒーを飲みほした。




