プロローグ
初めて書いてみた物語です。海の近くの田舎に住んでみたいなーと思いつつ東京で書いています。こんな青春を過ごしてみたかったと多くの方に刺さっていただけると幸いです。
主人公は狩野綾波です。波音はなお、穂波はほなみ、仁はじん、海はかいと読みます。
この町には、海がある。
朝になると、水平線の向こうから光がこぼれて、
夕方には、波がオレンジ色に染まる。
そして、私たちの名前にも、波がある。
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狩野 波音
富士海高校三年生
長女。
一歩引いた場所から、いつも全体を見ている人。
言葉は短くて、まっすぐで、少しだけ冷たい。
でもその裏側には、誰にも気づかれないように、
妹たちの背中をそっと押すやさしさがある。
幼い頃から一緒にいた朝倉兄弟には、
遠慮も、取り繕いも、あまりしない。
ときどき投げる一言が、
波紋みたいに、静かな日常を揺らすこともある。
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狩野 綾波
富士海高校一年生
双子の姉。
人の輪の少し外側に立つことが多い。
笑顔は上手。
でも、心の中では、いつも考えている。
この距離でいいのか、もう一歩近づいてもいいのか。
幼馴染の二人の前だけは、
その迷いを、ほんの少しだけ下ろせる。
自分では気づいていない。
誰かの視線が、いつも、静かにここに向かっていることを。
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狩野 穂波
富士海高校一年生
双子の妹。
風みたいな人。
笑って、話して、すぐに輪の中心にいる。
海辺でも、教室でも、どこにいても、
周りの空気が少しだけ明るくなる。
でも、ひとりになると、
胸の奥で、言葉にならない気持ちが波打つ。
それを、誰にも見せないまま、
今日もまた、笑っている。
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朝倉 仁
富士海高校三年生
兄。
落ち着いた声で、ゆっくり話す人。
学校では、生徒会副会長。
家でも外でも、自然と“頼られる側”に立っている。
誰かの気持ちに気づくのは、きっと早い。
それでも、すべてに答えを出すわけじゃない。
海を見つめるとき、
あるいは、綾波や穂波と話すとき、
その視線の奥には、まだ言葉にならない何かがある。
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朝倉 海
富士海高校一年生
弟。
感情が、そのまま表に出る人。
笑うときは大きく笑って、
困ったときは、ちゃんと困った顔をする。
兄の背中を追いかけながら、
でも、いつの間にか、別の方向を見ている自分にも気づいている。
砂浜に残る足跡みたいに、
その視線も、いつも誰かのそばに残っている。
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波音。
綾波。
穂波。
仁と、海。
幼い頃から並んで歩いてきた五人。
同じ景色を見て、同じ波の音を聞いてきた。
でも、同じ気持ちを、持っているわけじゃない。
波は、寄せては返す。
触れそうで、触れない距離を残しながら。
私たちも、きっと。
その中に、立っている。




