八日目-6-
その夜。
帝国議会からの回答が、電信で送られてきた。
ルドウィクはそれを執務室で受け取り、いつものようにマリエルがそれを解読する。
「『皇帝陛下が納得していないため、あと一日猶予が欲しい』だと?
……議会は現状を理解していないのか」
嘆息と共に、ルドウィクは手で顔を覆う。
マリエルはそのそばで、足元がおぼつかないのを必死で誤魔化しながら、立っていた。
結局、ルドウィクは『あと一日、これ以上は伸ばせない』とだけ書いて、議会への返答とした。
いつものように官吏にそれを渡す。
そのあと、椅子に座ったまま天を仰ぐような姿勢で、深く息を吐く。
マリエルは、ルドウィクの隣にいることが、とてつもなく辛かった。
もうそんな資格などとっくに失ってしまったというのに、偽って、図々しくも、何食わぬ顔でいる。
……それでも、この事態を好転させることができるのなら。
それが一番、閣下の助けになる。そう信じている。
そのためなら、どれだけ汚名を着せられようとも、たとえ閣下に憎まれようとも、構わない。
────執務が終わったら。
マリエルは、ずっとそれだけを考えていた。
あの手帳の中身を、確かめなければ。




