【セリフだけのSS】とある女子大生たちの朝の会話
「亜里沙、おはよう」
「おはよう詩織。この講義室暑くない?」
「ほんと暑過ぎ。エアコン壊れてるし、最悪」
「あ、そうだ。最悪で思い出したんだけどさぁ。ねぇねぇ聞いてよ、昨日さ、あたし異世界行ってきたんだよね」
「うん。……うん?」
「勝手に連れ去って、あたしのことを聖女だの何だの崇めておいて、『帰りたかったら世界を救え』とかなんとかうるさいの」
「えっと、それ、昨日の話で合ってる?」
「合ってるよ〜。楽しみにしてた推しのリアルライブがある日だったのにそんなのってないじゃん。マジのガチでブチギレ案件だよ。ついつい王様のカツラを引っ剥がしちゃった」
「そ、そうなんだ」
「そしたら兵隊に捕まって牢屋に入れられてさ。わけわからんくない?」
「最初から全部わけわかんないよ。私の理解の範疇を超えてるよ」
「でもハッピーエンドは訪れた。ずばり、あたしの彼氏が迎えに来てくれたのでーす」
「亜里沙、彼氏いたんだ」
「昨日できた」
「――――――は?」
「国を滅ぼすついでに檻を開けてくれてね。助け出された時、運命感じちゃって。勢いで告ったら即OKもらえた。異世界人ちょろいから詩織にもおすすめしとく!」
「え、ちょっと待って。一回待って整理させてお願いだから」
「今度合コン開いて紹介するね! 彼氏のおかげで異世界とこっちの世界の門がガバガバになったから、たくさん連れて来られるんだー」
「嘘でしょ。いや、これは亜里沙を嘘つき呼ばわりしたいんじゃなくて、常識的に考えて『昨日異世界行ってきた』なんて話さないし」
「どうもー皆さんおはようございますー」
「誰!? 銀髪だしツノ生えてるし明らかな不審者が入ってきたんだけど!?!?」
「あ、こいつはあたしの彼氏。異世界の魔王サマらしいよ?」
「聖女アリサの言う通りにスーツというものを着用してみたのだが。どこかおかしいところでもあるだろうか」
「失礼ながらおかしいところだらけ……っていうかよく見ると美形過ぎて目が焼かれそうだわ!」
「ふふーん。羨ましいっしょ。不幸中の幸いの幸いがデカくてラッキーだったよね」
「そんな話、こんな何の変哲もない教室でしていいの!? 怖い人たちとか来ない?」
「だいじょぶだいじょぶ。異世界人に追われてるけど彼氏がなんとかしてくれるもん」
「ねぇ怖いこと言わないで」
「あ、もうすぐホームルーム始まっちゃう。じゃあよろしく、ライリード・バーソレニュ・パシバル・イグナティ・ウォゲ=トマス・ファッツオルデンリッジ・ダンズミア」
「承知した、聖女アリサ」
「名前なっっっが! てか亜里沙の彼氏、教壇に立ってる……!?」
「魔法でズルして先生になってもらったんだ。今日からバッチリ最高の講義をしてくれるから、楽しみにしてて」
「ショック過ぎて講義どころじゃない!!」