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第6話 俺の三ヶ月


 「クククッ」


悪い笑みを浮かべ狼人族集落にて、その日獲れた青魚を自家製竹籠へとつめていく稀人。

 手押し一輪車へと積み終えた男に尋ねるセン。

「あの泥水はなんだったのだ。」

「釉薬。」

聞き慣れない単語を狼人の若者達は反芻する。




 暫し集落の様子を眺め、魚を処理する貫頭衣姿の狼人婦人を指差し。

「アレ アレ クレ サカナ アタマ サカナ ナカ サカナ ナカ クレ」

「わからんわッ」

稀人の言葉にキレ気味に応えるハクを宥め、多分だがと前置きするセン。

「魚の頭と内臓が欲しんだろ。タン、お袋さんから貰って来てくれるか。」

「あいよ~。」

仲間の一人、灰毛の狼人が小走りに駆けて行った。捨てる部位を大量に持って行く息子に首を傾げる母。稀人は彼等五人に身振り手振りを交え説明する。

「魚醤 ツクル デキル スゴク スゴク サキ 魚醤 ウマイ 魚醤 ツクル オシエル」

「え?ああ あんな物が食えるのかよ?」

この日から集落では魚の捨てる部位の塩漬けが始まった。




「オマエラ ツイテ コイ」

「どこにだ。」

「オレ イエ クル」

三度目の面会。稀人が彼等の名前を憶えた頃、五人の狼人族の若者を自宅へと誘った。

 白毛、アルビノのハク

 黒毛、メラニズムのセン

 灰毛、マク、タン、ホウ

五人は男の提案に顔を見合わせた。

センが目線を送ればハクが頷く。

「行ってみるか。」 




 槍、弓で武装した狼人五人を引き連れ、一輪車を押し道無き道を進む。時折立ち止まり何やら作業をする自称神を眺めるハク達。

時に木の幹から樹皮を剥ぎ、時に樹液を集めたペットボトルを回収する。

マクは空のペットボトルをしげしげと眺め。


「これ、どうやって作るんだ?」

「ムリ フシギ カミ ノ チカラ オレ ツクル ナイ」

「何だ?お前作れないのか。」


やはり出来損ないの神らしいと狼人の若者は髭を震わせにやついた。

「モノ ツクル タイヘン イッパイ イッパイ ジカン イル コレ オマエ オレ オナジ」

片言の言葉で真理を語る。これにはハクも顎下を撫でながら、そ~いうもんだよなと同意したのだった。





幾らか歩いた頃。

「ど、どこ連れて行く気かな。突然、人族の集団に囲まれたり、、、」

「落ち着けタン、その時は散り散りに逃げるぞ。脚は俺達の方が上、さらに森の中だ問題無い。」

リーダーハクの言葉は力強い。この言葉だけで皆の不安も紛れた。

「アレ イエ ウチ ミエタ」

告げ一輪車を押し駆け出す稀人、灰狼が一人、ホウが競争だ!と駆け出した。

 

   



   ( ° д ゜) ポカーン

 五人の狼男がボロい平屋の前で間抜け面を晒していた。木とトタン、そして足元はコンクリ、屋根は瓦、窓があり透明ガラス。あまりにも自分達が住む竪穴式住居とは違ったためだ。

「お帰りなさいませ。」

「キャク イル」

アルミ引き戸を開け出迎えるニケ達、娘。

ここでハク一行はさらに困惑する。

玄関口の土間。台車に乗る灯油入りポリタンクと

原付二輪。なんコレ?であった。



 あ、こいつ等も風呂入ったことねーよな。

土足で家上げたくNeeee!先に用事済ますか。

 


 「ようこそ、おいでくださいました。ここは客人神まろうどがみえびす様の神域。私はお世話をさせて頂いておりますニケ、こちらはアイでございます。」

ニケが対応する間に稀人は用事の物を取りに上がる。

「兄ちゃん、おかえり」

「兄貴、おかえり」

「サカナ アル 冷蔵庫 イレテ」

寄って来た双子に一輪車の荷を任せ。



「オマエラ コレ アレ マゲル ヤレ」

五人の前に突き出される紐巻き黒棒、そして、タンが背負う木弓を指差す。


「意味わかんねええええ」

「同じく。」

「だな」

「えーと 弓なんじゃない?この棒。」

「多分な。」


タンとセンは理解した様で

「んんなん自分でやれよ〜 オラ ふンンンン て硬えよ 曲がるかッ!」

奪い取る様に弓胎ひごを手に取り単独で曲げようとするハク。

「タン端持ってくれハクはこっち俺がこちらをもつ せーの!」

三人掛かりで曲げる弓柄、待ってましたとばかりに稀人が両端に紐を掛ける。


「なあ?この弓でかすぎないか?」


出来上がった弓は上下非対称、長さ2m超の和弓。それも重籐弓。





竹と木材を集めた。

漆を集めた。

ニカワを得る為に野生小動物を狩った。

鳥の死骸を発見して羽をむしった。

手持ち糸と植物繊維をより合わせて弦を作った。

(‘・ω・)長かったぜ、俺の3ヶ月。




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