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第4話 狼の血脈

  

   「オレ カミ エビス アルヨ」



 異世界生活、三ヶ月。


「うーさぶ」

吹き付ける潮風。冬の到来。

大海を前に折り畳み椅子に腰を下ろす稀人。

横には一斗缶にて焚き火、上にはフライパンを乗せる。フライパンの中で煮立つ海水、時折海に入り海水を足していく製塩作業。

食用貝が獲れないかと砂浜をスコップで掘り起こしてみたものの、出てくるのは貝殻ばかり、これはこれでと集め終え椅子に腰掛ける。

 海を眺め考えを巡らす。





「私達はエビシ様への供物なのです。」

「クモツ?」


共同生活の中で幾つかの言葉を憶えた。

片言の単語、断片的な情報を繋ぎ合わせていく。

語るのは最年長ニケ。


「私達は村の共用奴隷です。」

「ドレイ?」

「はい、親が居ません。私達の心の臓を神エビシ様に捧げよと長老のババ様が。」

「ハァ」


眉をハの字に下げ呆れる男を少女は上目遣いに伺う。


「心の臓、お好きなのですよね。」

「イラナイ アル えーあれ〜? オレ?カミ?」



 ワイ イマ Now God ア( ゜∀ 。)ヒャ



彼女達は鬼人族が信仰する神へと捧げられた贄。

村の為の人柱。

 長老主導の元、行われた神降ろしの儀。

無知蒙昧なる土人の行為、あり得ないはずだった、しかし事は成る。

眼前、突如出現したボロい平屋。

それは彼女達にとって奇跡の現出。

神住まう神殿と共に神が地へと降り立った。

鬼人達は叫んだ、エビス、エビシと叫んだ。

我等が御大神が永遠の楽土へと導いてくれると信じ疑わ無かった。それは


「エビシ様こそ我等鬼人族が求め続けた御大神で御座います。」


正座し畳に額を着け伏す少女ニケ。隣でアイもまた同様に伏す。

ミミ、ミウは稀人に、構って欲しいのか纏わりつく。


「ナイ アルヨ〜 オレ マ・レ・ト」


少女は伏す。それはまるで神気を放つ神への畏敬。供物であった自身に求めず与え続けた男は彼女にとっての現人神。


「どうか、お側に置いてください。一生を懸けお仕え致します。」

「コマッタ アル」





 あの時の会話を思い出し嘆息する男の耳が砂を踏む音を拾った。


 “うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ”


 ワイ イマ Now God (( °ω° ;))gkbr


 それは猛々しき獣。

白き狼と付き従うは黒狼と灰狼。

ニケから得た情報通りであった。

五人の獣が稀人を威嚇する。

艶のある白い毛並みの下、全身が筋肉。

身丈は182cmある稀人よりも高い。


「人如きが、この地に何用か!八つ裂きにしてくれるわッ!!」


それは人語を解した。

それは二本の脚で立ち、二足歩行した。

それは右手に石槍を握りしめる。

それは腰巻きを着用し毛皮の上着を羽織る。

人狼。狼人の戦士達。


ここは狼人族の縄張り。

そして、人間は狼人族にとって、いやこの地に住まう者にとって敵対種族。


 ニケは語った。神降ろしの意義を。自分達の現状を。


 稀人は椅子から立ち上がる。

白狼人の背後、三人の灰狼人が石槍の穂先を向ける。しかし稀人は彼等の怯えを感じ取る。


「オレ カミ エビス アルヨ」


その衣は綺羅綺羅と輝いた。

ただのポリエステル生地。稀人の大事なスカジャン、龍の刺繍入り。

頭を守る兜は原付用フルフェイスヘルメット。

手にはゴム付き作業手袋を着用。

仕立て良きズボンは量産品。お洒落作業ズボン、ポケット多数。

履く靴は黄色と黒のゴム長靴。

その成りは彼等狼人族が識る人間とは一線を画す。

 怯える灰狼人三人。

 



 後世迄、語り継がれる程の大詐欺師。(自称)

 世界の全てを騙した男。(自称)

 ここが歴史の転換点ターニングポイントだった(後世の歴史学者)



  神 恵比寿が 今 この瞬間 産まれた


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