第16話 その出会いは バークス商会
店を物色する。
高級服、材木商、鋳物専門店、乾物屋、貴石商、布地専門店、花屋もあった。
多くの店先を一瞥し通り過ぎる。
とうとう、城北通用門の前迄来てしまう。
引き返し再度店を吟味すべきかと考えていたマレの目に赤煉瓦のこじんまりとした店が留まる。
窓には薄緑の分厚い硝子が嵌め込まれる。
うっすらと見える店内。
室内、調度品と硝子瓶が並ぶ。
硝子瓶の一つに視線が吸い付いた。
「え?胡椒?」
黒い粒コショウに誘われ、マレは扉取っ手に手を掛ける。
扉上部に取り付けられたベルが“カラン コロン”と男の来店を告げた。
いらっしゃいませの言葉と暫しの逡巡。
「初見のお客様でございますね。雑貨と家具、香辛料の店バークスへようこそ。私が主人のバークスでございます。」
一人の老女が自己紹介と共に男を出迎えた。
白髪に落ち着いた青の婦人服。
歳は七十を超えているだろうか。
野卑た熊毛皮の男を見ても女主人バークスは顔色一つ変えはしない。
丁寧な口調と品格、そして店構え。歴史を感じさせるものが確かにあった。
「始めまして、駆け出しでは御座いますが交易商を営んでおりますヨシツネと申します。本日はバークス見て頂きたい品がございまして参りました。」
フードをとり黒髪を晒し深々とお辞儀をする。
「あらあら、男性で交易をですか、お若いのに。」
バークスコロコロと笑い、微笑する。嫌味を一切感じさせない自然な笑みであった。
「お茶を淹れましょう。こちらの席におかけになってください。」
女主人バークス勧められた椅子に腰を降ろす。
椅子机共に使用感から年季をうかがわせる。
華美では無いが美しい彫刻、一目一流の職人の手によるものと判るほどに。
十分程でバークスが金属製のポットとカップ、さらに焼き菓子を乗せた盆と共に現れた。ポットカップ共に装飾の無い年季物、しっかりとした造りが目に見て取れる。
焼き菓子の乗る皿は縁に見事な装飾。
マレは自分が当たりの店を引いたと確信する。
カップに茶を注ぐバークス、注ぎ一つとっても気品溢れる婦人。
この世界で初めて感じた、優美優雅の感覚。
「冷めないうちに、どうぞ。」
「いただきます。」
出された茶は発酵茶葉を淹れた紅茶。
まずは香りを味わい。
「良い香りです。」
男の反応と言葉にフフと微笑するバークス。
口をつけ一口、そしてカップを眺める。
「派手さは、あえて求めず。良い造りの物を長く使用する。子、孫が使ってくれるかもしれませんね。」
老婦人は男の反応にとても嬉しそうに微笑した。
「こちらの菓子も召し上がれ。」
「頂きます。」
ほんのりとハチミツの甘味、小麦粉とバターの焼き菓子を頂く。
「美味しいです。とても、お茶に合います。」
「お口に合って良かったは。」
そろそろ本題に入る頃合いかと営業に入るマレ。
「こちらの品々をバークスさんに見て頂きたく。」
机の上に並べていくのは、絵付け済みの陶製容器。この瞬間、バークスは目を細め陶製容器の目利きを始める。
「容器が気になりますか。」
「ええ、とても。」
「それは良かった。バークスさんに見て頂きたいのは、容器と中身の両方です。」
まずは円筒容器の蓋を取りバークスの前に押し出す。
蓋を開けた瞬間からバークスの脳と鼻腔はやられた、その芳醇な香りに。
触れても?と尋ねる貴婦人、どうぞと勧めるマレ。
バークスは品を手に取り鼻を近づけ香りを堪能する。
「御香かしら?」
「香辛料です。こちらに粉末状の物も、ご用意してあります。」
マレが手で示す小徳利には粉末シナモン、粉末ニッキ、メイプルシロップが、バークスが今手にするのはシナモンスティック。
「この香辛料は、どの用に楽しむのかしら?」
「そちらの棒状の物は紅茶に入れていただけば宜しいかと。こちら粉末状の香辛料と液状の甘味ですが、こちらも茶にいれるも良し、こちらの菓子に振り掛けるも宜しいかと。」
バークスは口元を手で隠し逡巡し。
「お茶を淹れ直した方が良いわね。うんと熱いものを。」
初見の客が持ち込んだ初見の品はバークスの好奇心を大いに刺激した。
「いいわね。」
少量の紅茶にて香辛料、甘味料を試飲しつぶやいた。香辛料、甘味料の名称を尋ね、利用方法を詳しく尋ねてくるバークス。
「ヨシツネさん。此れ等の品はそれなりの量を確保できるのかしら?」
彼女の質問に渋面で返す事になるマレ。
「シナモン、ニッキ、メイプルに関しましては、私が持ち運びできる量の、としかお約束出来ないかと。」
「頻繁に卸せるかしら?」
「生モノですし栽培状況次第としか。年一位になるかと。」
男の言葉に婦人は憂慮の息をもらす。遺憾なと男は好感度を下げぬ様に話しを振る。
「バークスさん、自分と取引して頂けるのでしたら、他の商品もご提案させて頂きます。例えばーえ〜とー」
何が用意出来る?と考え言葉に詰まるマレ。
ふんふんと二度頷き尋ねるバークス。
「こちらの器はどうなのかしら?」
香辛料容器に言及する婦人。
「職人次第ですね。ある程度の融通は利くかと。」
陶器に興味を示すバークスに対しマレは用意しておいた品を麻袋から取り出し並べた。
「こちらは陶器、こちらは陶磁器または磁器と呼びます、見ていただいた通り、材料は土です。」
机に並んだ品を視るバークスの眼は真剣で、しかし心は躍る。素晴らしい。
丸大皿には海の波の絵、背後には山、有名な作品の模写。
丸大皿には赤く染まる山、これまた模写。
長方形の皿には奇妙な髪型の女性、やはり有名な作品の模写。
最後は漆黒の歪んだ形の茶碗。
「こちら、食事を食べ進める事で絵を全て鑑賞して頂けるかと。」
「ええ、大変よいですわ。ただ、そちらの碗は何と評価して良いのか。」
黒茶碗に首を傾げ口元に手を当て思案するバークスであった。
「こちらは私の国の喫茶専用の碗でございます。」
この大きな碗で紅茶を頂くを想像し眉根を寄せるバークスにさらなる説明を重ねる。
「私の国では昔は茶で人を持て成すのが、とても流行したのです。茶器に少量の茶を淹れ皆で回し飲む。器を観て良さ語る。独特の感性、侘びている 寂びている 侘び寂びと言いまして。」
バークスに語る、侘び寂び。慎ましく質素な趣を説明する。歪んだ器が有する完全では無い美しさを語る。
「この黒茶碗ですと。“渋い”と評します。」
全てを理解すること叶わず。バークスは神妙に男の説明を聴いた。
「昔々は皆競い茶会を開いたそうで、良い茶器を求めました。それが行き過ぎて茶器一つと城を交換したい。茶器と共に死ぬ人迄でたそうです。」
マレの語る昔話にバークスは、あれあれ、まあまあとニコニコと笑い聴いた。
「とても楽しいお話、ありがとう。ヨシツネさん?貴方、お国はどちらなのかしら。珍しい、お名前、髪の色、顔、体つき、初めてだわ、貴方の全てが。」
来るだろうと予想していた質問にマレはそっと目を伏せる。
「遠くから来ました。もう二度とは帰れない程、遠くから来ました。」
「ごめんなさい。余計な事だったわね。」
「いえ、いいんです。バークスさんに故郷の話を聞いて頂けて嬉しかったです。」
男の演技、貴婦人はコロりと騙される。
二人は静かに笑い合った。
その時、男の眼にある物が留まった。
マレは指を差し。
「バークスさん、あれは暦表ですか?」
問われ彼女は振り返り。
「ええ、そうよ。」
「今日は何月何日で?あの暦は、太陽ですか?月の周期どちらで作られてますか?」
「今日は十一月、二十九日。暦は太陽の周期に合わせてありますわ。」
「有難う御座います。やっと識ることができました。」
「あら?そんなに知りたかったの?」
「ええ、遠くから来たもので、右も左もわからず、どころか、此処は?貴方は誰?状態でして。」
「あ〜苦労したのですね。」
「いえ、此方でも家族、友人と呼べる人も多数できました。それなりに、やっていけるように成ったところでしょうか。」
マレの言葉と表情にバークスも笑みを浮かべる。
「あら!大変!」
ある事に気付き狼狽えるバークス、どうされましたと尋ねるマレ。
「貴方とのお話しが楽しくて、つい。」
過ぎた時間、外はもう陽が落ようとしていた。
そして遅々として進んでいない商談。
「困りましたね。唯でさえ値が付けにくい品々ですのに。」
「初回です。買取り価格は、あまり気にしていません。バークスさんと知己を得れた事に感謝しております。」
「駄目よ。ここは伝統と信頼のバークス商会。そして私は商会主。ヨシツネさん、時間はまだよろしいかしら?」
「あ、はい、大丈夫です。」
「まずは、店内外の油灯を灯してきます。暫くお待ちになって。」
後にマレは述懐する
212 マレ いい子ぶりっ子
年配の貴婦人とのツテができますた( ´∀`)
213 名無しさん
熟専乙
214 名無しさん
BBA専乙
215 名無しさん
BBA専のワイ禿しくSHIT チソコもげろ
216 名無しさん
熟も熟成し過ぎだろ 腐り杉ww
217 名無しさん
腐って捨てる寸前が一番美味い
てばっちゃが言ってた
218 マレ
じゅじゅじゅ熟専ちゃうわ
この時、また明日来ますねと言えばよかた
まだまだ本当の地獄はこれからだ('A`)
219 名無しさん
鬼っ娘 ロリ GAL 熟女 BBA
吹き荒れる女達のジェットストリーム
アタック
次回予告 振り返れば奴がいた
マレの明日はどっちだ!?
それなんてエロゲ?
220 マレ
≫219 シャレになってないから困る件
うつだしのう('A`)