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第14話 市場調査 人生はVERY HARDモード

 

一時間程歩く。


ラキから聞いた通り街あった。

街道宿場町ルール。

早朝にも関わらず人通りは多い。

マレは用心の為にフードを深く被り直す。

人目を避けた場所でメモをとる。

 ロロ村↔ルール宿場町 約28km

 


 街道、周辺の建物をじっくり観察していく。

今迄見たみすぼらしい住居とは異なり、どの建物も何かしらの商売を営み、店先には看板が下げられる。

絵を主体とした看板、端には小さく文字。

生憎とこちらの文字が読めない。


 馬車の荷台から荷を積み降ろしする者。

労働者に混じる狼人族、虎人族らしき者。

彼等の足には鉄の枷と鎖。


奴隷制度。

世界の現実で常識。

そこに善悪は存在しない。

この世界を生きる者にとっては社会を構成する一つと自分を無理にでも納得させる。


 気になっていた事を確認していく。

人々の髪色。

現在確認できたのは、金髪、赤髪、灰髪、茶髪の四色。

そして鬼人族の女達は赤髪。



 道行く人々はチラチラとマレを見る。人によってはガン見する。

高身長ゆえマレは兎に角、目立つ存在だった。



外から並ぶ商家を眺めていた。

カンカンと鎚の音が聴こえる。

看板には金槌の絵。

如何にもな鍛冶屋の前で鎚の音を聴く。

 音に釣られ工房を覗き込む。

中年の女と若い娘が鎚を振るい赤く焼けた金属を叩く。


「らっしゃい 何かご入用で。」


十代、年若い娘がマレに気付き、手を止め腰を上げるが、マレはバツが悪そうに俯きながら。


「いえ、客では無いんです。ただ〜どんな物が幾らで買えるかなと気になって見てました。あの、邪魔にならない様、気をつけますので見学させてもらえませんか?」


男の言葉に落胆の表情を一瞬見せたが見学したいの言葉にニヤッと笑い。


「母ちゃん 構わないだろ。」


娘の問に母は答えず黙々と鎚を振るう。


「母ちゃん口下手でさ気にせず見てってくれよ。」


マレは頭を下げ礼を述べる。





 ドロドロに溶けた金属を鋳物の型に流し込む作業を眺める。

(鉛、銅、青銅あたりか?)

先程の鍛造作業は鉄、造っていたのは農具。

今、母娘は鋳造品を造る。

工房内、各種工具、設備を一通り眺め、作業が一区切りついたのを見計らい娘に声をかける。

見るだけはただ、聞くだけはただとばかりに。

壁際の商品、自身が欲しいと思った農具を前に。


「スコップの先、おいくらです?」

「お! 買ってくれるのかい。」

「いえ、今、手持ちは無くて。」


マレの情け無い表情。

娘も見て判る程に落胆し溜息をつく。

それ迄、無言だった母から檄がとんだ。


「スズ、そんな顔するんじゃねえ。しっかり説明せんか。今は無理でも、良いもん造ってりゃ、何時か買ってもらえるって言ってるだろ!」


母で親方、彼女の職人らしい言葉にマレは感心してしまう。


「かーちゃん ゴメンよ。」


母の叱責に肩を竦めた娘は気を取り直し説明を始める。


「このスコップは銅貨20枚、柄まで着けたら24枚。」

「こちらのツルハシは?」

「そいつは銅貨25枚に柄を着けて29枚てとこだね。」

「こちらのフライパンは?」


金額を片っ端から聞いていくマレ。最後に赴きの異なる品の値段を尋ねた。


「おっあれかい! 売り物ではあるんだけど、うちの看板商品、鉄のロングソード、買う奴はまずいないかな。」

「お高いんでしょう?」

「銀貨20枚! うちで一番値が張る商品。まあ、儲け無しなんだけど。」


胸を張り誇らしげに答え、儲け無しと告げハハッとから笑いする。

マレは抜身の鉄製ロングソードに間近迄、近づき顎に手を添え。

「いい仕事してますね。」



焼入れはされて無いよな?技術レベルで言えば古代中国200年前後レベルか? 浪(*´ω`*)慢

 





 スズと女主人に礼を告げ鍛冶屋を後にする。

人目を避け建物裏で先程の商品と値段をメモする。取り敢えず銅貨1枚200円〜500円位かと仮定し頭を悩ますのだった。

 その後も各店先を覗いて周る。宿屋らしき建物、酒場、飯屋、雑貨屋。

特に雑貨屋は注目した。

食器を眺める。

店先に並ぶのは金属と木製食器ばかり。


 陶器、陶磁器、漆器の需用は、有りそうだな。


 店内奥にはガラス製品が大事そうに置かれているのも見て取れた。

そのどれもが色付き硝子。

紙も販売されてはいたが、紙と言うよりパピルスレベルの品質でなかなかに興味深い。

マレの脳内はフル回転し、思いついた事象をメモしていく。

食料品はそら豆、ひよこ豆、大麦、小麦。

米もあったが店内隅に追いやられ需用の少なさがうかがえた。

 草、葉物の乾物に種、流石異世界と言える程の物は無い。

カルダモン等の各種香辛料を確認していく。





 そろそろ先を急ごうと歩きだす。

老女二人、ラキに教えられたとおり、道が二手に分かれていた。右側、広い街道へ進もうとして、

胸が苦しくなった。



 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな

      俺を見るな!

      やめろ!!!!!!!!



 薄汚れて物乞いが辻に座る。

木の皿一つを地面に置き、道行く人をぼんやりと眺める。


 それが、それが、大人であったなら。

 それが年の頃十にも満たない少女でなければ。


 マレは俯き顔を伏せて足早に過ぎ去る。

見てはいけない。見てしまった。

少女の顔を見てしまった。

 物乞い少女無気力な表情とミミとミウ二人の笑顔が重なる。

 胸にある筈の無い棘が刺さる。

 胸にある筈の無い傷がジクジクと痛む。

 これからも幾度となく目にするだろう。

 これからも幾度となく心乱されるだろう。

 世界は残酷で無慈悲だ。

 神はいない。


男はさらに歩を早めた。逃げるように。



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