75,二度目の……
そして本日の練習メニューがひと段落ついた所で、ようやく俺達は千世の別荘へ向かう。
……いや、さっき荷物置いた時にも思ったんだけどよ。
「やっぱりこの別荘、でかいよな……」
マジででかすぎるぜ、この別荘。
正直、俺達がいてもまだ足りるくらいの広さは持ってる。
……なんて羨ましいでかさだ。
俺にくれよ、その別荘。
「そう言えば瞬一。お前あの後小松ちゃんにコクられたんだよな?」
「うん? あ、ああ……そんなこともあったっけな」
そう言えば、晴信にラブレター(本人曰くラヴレター)が来た時の騒動を思い出す。
あれは確か晴信に対する告白ではなく、俺に対する告白だったんだよなぁ。
……結局、あの子の想いには答えてあげられなかったけど。
「ああ。あれは俺がフッたな……諦めないとか言われたけど」
「……瞬一君。どうして君はそういつもいつも女の子にフラグばっかり立てちゃうのかなぁ?」
「……え?」
その時。
ふと背後から謎の殺気を感じる。
しかも数は……何人分だ?
「瞬一……その話しは初耳なんだけどなぁ」
「瞬一君……やっぱり一から話し合った方がよさそうですね」
「……浮気は、許さない」
「瞬一先輩……少しはその……自覚を持ってください」
「……え? え?」
えっと……上から順番に、葵・春香・月夜・優菜の順番だ。
おまけに、アイミーの分まで加わって……計六人分だと!?
「……幸せそうだな、瞬一」
「テメェは見てないで助けろや!!」
してやったり顔で俺達のことを見つめる晴信。
俺はそんな晴信に助けを求めたが、
「へっ! 前に俺の純情を奪った罰だ! 潔くボコられて海の中にでも沈んでろや」
「そんなこと言うのか? だったらこうだ!! この前お前、別の女の子からまた新たに告白受けてたよな? あの時お前、どう返事したんだっけか?」
「ば、バカ! その話しは今ここで……」
「……晴信先輩?」
「あ……ああ……!!」
よし、作戦成功!
現在の刹那は晴信にぞっこんラブなのだ。
だから刹那の怒りさえ買うことが出来れば、後はこっちのもんだ!
「……覚悟はできてるわよね?」
「いや、あれは違うんだ! 決してあれは舞い上がってて魔が差して答えようとしてたわけじゃなくてだな、ほ、ほら! 昔のことわざに『英雄色を好む』というじゃねえか! そう、それの通りに実行しようとして、お前がいるからやめようと思って……」
「けど、結局その告白の返事をうやむやにさせたのもお前だよな? 刹那という彼女がいながら、その告白に対してきちんとフレなかったお前の責任だよな?」
「おまっ……なんでそんなこと知って……!?」
……刹那の身体、完全に震えてしまっています。
あれは完璧にキレたな……終わったな、晴信の人生。
「……信じてたのに。晴信先輩に限ってそんなことないって信じてたのに!!」
「いやだからさっきの瞬一の言葉は半分嘘で……ぎゃあああああああああああああああああああ!!」
反論虚しく、晴信は刹那の魔術によってあえなく撃沈。
……さらば晴信、短い人生だったな。
「……さて、晴信君が沈んだ所で、そろそろ瞬一君の方の審判も始めないとね♪」
「……あ、晴信に免じて見逃してくれるとかないのね?」
「当り前だよ。晴信君は晴信君、瞬一君は瞬一君だもんね……♪」
……ああ、今年度二度目の、俺、死亡のお知らせ。