73,魔術格闘部主催夏合宿
「合宿in沖縄!!」
「いっやほ~う!!」
……そんなわけで、俺達は今、沖縄に来ていた。
合宿というのは、本当に名目上のことだと思う。
なぜなら……本来なら俺達は高校三年生の一学期で部活が終了するはずなのだから。
しかし、俺達の部活はちょっと違う。
俺達の最後の大会は、夏休みが明けてから開催されるのだ。
なので、俺達はまだ部活から解放されることはない。
受験勉強もしなきゃいけないのに、本当にこんなことをしていても大丈夫なのだろうか……とか不安に思ってる人も実はいるのではないだろうか?
実は最近魔術の力を評価する大学が増えてきている為、あまり心配することもない。
……まぁ、それでも学力で評価する大学の方がまだまだたくさんある為、俺もそろそろ勉強の方に頭のシフトを向けなければならないわけだが。
「ひゃ~広い海だなぁ……海って言うのは、本当に広いもんだぜぇ~こうなりゃ一日遊び倒すしかねぇだろ!!」
「いや、合宿で来てるんだからな。あくまでも合宿で」
本気で遊びに来たと勘違いしている晴信に、俺はそう注意点を付け加えておく。
あ、ちなみに終業式はもう終わって、一学期の成績も返ってきた。
俺は……まぁまぁだったんじゃない?
勉強してないにしては出来た方だよ、うん。
詳しい成績は……あまり聞かないでくれ。
ちなみに、他の奴らは普通かそれ以上はとっていて、晴信は……。
「晴信先輩、実は赤点がたくさんあったのをここで発散しようと思ってない?」
「それ以上は何も言うな刹那! そんなことはないぞ、決して八個赤点をとったなんてことは決してないからな!!」
「……晴信、それ自滅してるよ」
気が動転していたあまりに、晴信は自滅していた。
それに対して、葵が呆れながらにツッコミを入れていた。
……にしても、魔術格闘部の奴らって人が多いのな。
いくら合宿の為に千世の所有物である沖縄の無人島にやってきたとは言え、この人数とは……。
ちなみに、大和・大地・北条の三人は魔術格闘部ではなく剣術部の合宿に行っている為、今回は不参加ということになっている。
まぁ、あちらもあちらで大会があるんだそうで、部活が終わるまで結構な時間がかかるんだと。
そして、今回の合宿には魔術格闘部ではないけど参加しに来た人物が三人。
まず一人目は、
「……どうだ? 月夜」
「……綺麗な海。早く泳ぎたい」
「まぁ、泳ぐ時間とかは設けてあるから安心しろ。ただ今回俺達は魔術格闘部の合宿として来てるわけだから、一応練習もしないといけないし……」
「……そう。なら、終わるまで待ってる」
現在どこの部活にも所属していない月夜。
これからも部活には所属出来ないし、本人もする気はなかったらしい。
理由は、特になし。
強いて言うなら、体力的な面での問題だ。
二人目はもちろん、アイミーだ。
アイミーは、ほとんど千世が呼んできたと言っても過言ではないが、今回は特別コーチ役として来てもらった。
「みなさん、よろしくお願いしますね」
「アイミーンさん! そのまま夜の方の特別コーチも……」
「「死ね変態!!」」
ドゴッ!
乗り上げてきた小野田を、刹那と千世の二人が砂浜の中に埋め込む。
……凄い力だな、これは。
そして三人目は、
「お久しぶりですね、瞬一さん」
「ああ、久しぶりだな……空」
葵の妹、空も今回の合宿に参加するらしい。
理由は、葵が空を放っておけなかったということからだ。
とにかく、こんな騒がしいメンバーで今回の合宿は開催されるのだった。