67,宮澤晴信、人生初ラヴレター
Side晴信
「……あの、私……貴方の事が……貴方のことが好きなんです!!」
「……へ?」
俺は今、学校の屋上にいる。
何をしているのかと言えば、いまのセリフでお分かりになるだろうと思われるので、俺の口から直接は言わないことにしよう。
とにかく俺は今、幸せの絶頂期、言わばクライマックス。
ああ……なんて俺は幸せな男なのだろうか。
今まで瞬一のことが羨ましいとか思ってたけど、さすがの瞬一もこんな経験はないだろう?
そんなわけで、俺の気分は最高にハイってやつだ!! 状態になっていた。
さて、どうしてこんな状態になったのかを説明する必要があるな。
というわけで、ここに至るまでの過程を、回想シーンで送ることにしよう。
人は学校に来た時、まずは下駄箱の中から上履きを取り出す必要がある。
俺も例外ではなく、とりあえず今日もタルい一日が始まるのかなどと考えながら、俺は下駄箱を開けて、上履きを取ろうとした。
ちなみに、いつもよりは早い時間に来た為、生徒はまだまばらにしか来ていない。
「……ん?」
ここで、違和感。
……靴以外にも、何かが入っていないか?
「この手触りは……まさか……手紙!?」
下駄箱。
早朝。
そして、手紙。
このシチュエーションは……まさか!?
「ま、まさかなぁ……生まれてこのかた色沙汰なんてご無沙汰だったわけだし、今更そんなわけないよなぁ……言ってて落ち込むけど」
とりあえず現実を見る為に、俺は手紙が入っているだろう封筒に書かれた宛先を確認する。
『宮澤晴信先輩へ』
「……ついに、ついに俺にも春が!!」
慌てて俺は一階男子トイレに駆け込む。
そして、一番奥の個室に入り、そこで慌てて、しかし丁寧に手紙を取り出す。
……生まれてこのかたラブレターなんてもらったことなかったけど、これは間違いなく正真正銘のラブレターだ!
俺にもとうとうラブレターが届くとは……俺の魅力に気付くやつがいるとは思わなかったぜ。
「え~と何々……」
その手紙には、こう書かれてあった。
『宮澤先輩へ
突然のお手紙で御免なさい。
ですが、私はどうしても貴方にいいたいことがあるんです。
明日の放課後、学校の屋上に来てもらっても構わないでしょうか?
どうかよろしくお願いします……!!
1-C 小松彩夏』
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ついに……ついに俺の時代がキターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「まさに正真正銘のラヴレターだぜ!? 『ブ』じゃねぇぞ『ヴ』だぜ!! いぃやっほ~う!!」
ヤバい……最高にハイってやつだ!!
……今思えば誰もいない朝でよかったけど、この暴れっぷりってかなり異常じゃね?
そんなことはとりあえずおいといて、俺はその後トイレの個室から出て行き、しばらくの間何やら奇声を発しながら廊下を走り回っていた。
……いや、あまりにも嬉しかったんで、ついそんなことをしたくなるような気分になってしまっただけなんだ。
これだけは信じてくれ……俺は結構まともな方の部類に入るんだからな。
ちなみに、奇声を発しながら廊下を駆け回っていた所、風紀委員の誰かに捕まり、そのまま反省室に直行となったのは……もう言わなくてもいいだろう。