9,第二の試練
「……よく来てくれました」
私は今、昨日も訪れた神殿に来ている。
……これから私が行うべき試練を聞く為だ。
けど、試練って言っても、一体どんなことをやるんだろう?
まさか……昨日と同じく、また10人の剣士と戦闘とか……。
「大丈夫です。今回はそのような戦闘がテーマではありませんので」
「よ、良かった……」
私の不安をくみ取ったのか。
アルカ様がそのように言った。
「今回の試練は……精霊山という山があるのですが、そこから命の花を取ってくることです」
「せいれい……ざん?」
その山がどこにあるのかを……私は知らない。
だから、どこに行けばいいのか、さっぱりで……。
「パートナーに寺内麻美さんを連れて行ってください。そうすれば、案内してくれると思いますから」
「麻美ちゃんを? ……分かった」
確かに、ここの地理に詳しい人が一緒でないと、私は場所すら分からない。
そういう点でも、麻美ちゃんの協力は必要不可欠なのだ。
……そう言えば、モテラスさんはどこにいったんだろうか?
「モテラスなら、島の管理を引き続き行っています。ですから、今はこの世界にはいません」
「あの……モテラスさんって……」
「ええ。モテラスもまた、過去に光の器の力を使いこなす為の試練を乗り越えた人物の一人でもあります」
なるほど……。
だから自由にこっちの世界と自分の世界を行き来していたというわけなんだね。
「力を自由に使いこなした者は、自分の世界とこちらの世界を自由に行き来することも可能となります……ですが、力の使いすぎは、暴走するきっかけとなる可能性もありますのでくれぐれも気を付けてください。貴女はまだ力の引き出し方というのを理解していません。ですから……順々に試練を乗り越え、そして力の使い方を理解してください。そうすれば、貴女を元の世界に帰すことが出来ます……今の状態のままで元の世界に帰してしまったら、貴女の中に眠る力が……世界に適合出来なくて暴走してしまいます。ですから、どうか力を使いこなせるようになるまでは、待っていてください」
「……うん、分かった」
モテラスさんにも言われたけど、私はまだ力の使い方を知らない。
だから、いつその力が暴走するか知ったものではない。
第一、今のままだと世界に適合することが出来ないのだという。
なら……なおさら今の私は帰るわけにはいかないのだ。
「それじゃあ……行って来ます!」
「ええ……行ってらっしゃい」
私はアルカ様にそう告げると、急いで塔の方へと向かった。
Side???
「……準備は出来ているな?」
「……はい、なんとか」
「よし。ならまずは第一フェイズを実行に移す。各人、配置につけ」
「はっ!」
俺達は、指揮官らしき男に言われて、配置につく。
まったく、ここの指揮官ま物好きときたもんだ。
こんな世界を制圧して、一体何になるのだと言うのだろうか。
……天上界。
そこは、光が集う場所。
闇の存在である俺達がいるべき場所ではない。
ここは……眩し過ぎる。
なんだか、俺には割りに合わない気がする。
「……どうした、お前らしくもなくダラシナイ表情見せやがって」
「……いや、何でもない。少し、この世界が明るすぎると感じただけだ」
「まぁ……確かにな。ここは言わば光の世界。俺達にとって居たくもない世界だな」
「けど、現に俺達は今、この世界にいる……こんな世界を制圧して、一体何になるって言うんだ?」
堪えきれなくなって、ついに俺はそのことについて尋ねた。
すると、そいつはこう言ってきた。
「この世から……光をなくすためさ」