66,校長室にて
Side???
あの戦いの後、俺は宣言通りに校長室までやってきていた。
一応今回のことについてすべてを話す為、リーダーである俺が一人でやってきたのだ。
トントン、と扉を叩くと。
『構わん。入るがよい』
という、渋い声が返ってくる。
……考えてみれば、これが校長と会話する初めての機会だった。
「失礼する」
敬語なんかは俺には合わないし、第一校長に対して敬語を使う理由などない。
だから俺は、最初からタメ口を使って中に入った。
……中に入ると、校長が何かの資料に目を通しているのが見受けられた。
だが、俺が目の前までやってくると、
「……君か。一体何の用だね?」
読んでいた資料から目を離し、俺達に向かってそう尋ねてくる。
……怪我のことについて聞かないのは、恐らく事情を悟った為であろう。
「……アンタに、言っておかなければならないことがある。今までの事件について、だ」
「……」
校長はただ黙っているのみであったが、何も言葉を発しないということは、逆に事情をくみ取ってくれたものだと俺は勝手に判断した。
……そして、俺は今までの事件について、ありのままを語った。
もちろん、この学園のシステムについても、動機についても話した。
「……そうか。この学園のシステムが」
「ああそうだ! いつか言ってたな……この世界は成績がすべてじゃないって! だったら、この学園でもそれを適用してくれよ!! そうすれば、アイツが自殺する必要性なんて発しなかったんだから!!」
「……お主は、あの事件の続きを知らぬのか」
「……え?」
校長から発せられた、まさかの言葉。
あの事件の……続き?
どういうことだ……アイツは屋上から転落して、そのまま……。
「あの子の身柄は事情があって別の組織に移転されたのだが……彼女はまだ、息をしておるぞ?」
「!?」
そ、そんなバカな……!!
あり得ないだろう、そんなの!!
俺はこの目でアイツが転落して、命を落としている所を見てるんだぞ!?
なのに……何でアイツが生きていられる!?
あの高さだったんだぞ!?
「……そうか。これは冗談なんだな。そんな冗談吐きは……そんなの余所でやれよ!」
「冗談なんかではない。それなら、その証拠に写真を見せてやろう」
写真……だと!?
「つい最近までの容体を確認する為に、私達の方で写真を撮り続けていたのだが、まさかここで役に立つとは思っていなかった……」
そんなの……そんなのあり得ないじゃないか!!
だってアイツは……アイツは……!!
あいつはすでにいなくなってるはずなのに……!!
「……これが、証拠だ」
「……あ、ああ……!!」
そこに写っていたのは、女性がベッドの中で眠っている光景だった。
黒くて長い髪の少女が……目を閉じて、眠っている。
「かれこれ一年は眠り続けているがな、この少女はまだ生きている……病院がどこにあるのかまでは教えてはやれぬが、これで分かったであろう? お主の復讐は……単なる勘違いであったと」
「け、けど……!! ならばどうして公式では死んだことになってるんだよ!? だって変じゃないか!! 葬式までやって、火葬場まで行ったんだぞ!? なのにどうして……どうしてアイツは、今でも病院に入って治療を続けているっていうんだ!?」
「……そうしなければ、ならなかったのだ」
「何でだよ……何でなんだよ!?」
そして俺は、校長から衝撃的な一言を聞いたのだった。
「彼女は……目を覚ましたとしても、もう二度と、前のような笑顔を見せることはない……前のような生活を送れる可能性が極端に少ない。それが、“悪魔憑き”の末期症状まで至ってしまった者の、末路なのだから」
「……“悪魔憑き”だと?」
……アイツ本人が望んでそれをやったとは思えない。
ならば……裏でそれを手引きしてた奴がいるってことか!?
「……それはお主の目で直接確かめるのだな。私はそこまでは知らぬ」
「ああ……そうさせてもらう! アイツの恨みを直接この手で晴らす為に……俺はその黒幕とやらをぶっ殺してやるよ!!」
そして俺は校長室から出て行った。
……頭の中に、もやもやを残して。
次回予告
「ついに、ついに俺にも春が!!」
「アンタだけは絶対にないと思ってたのに……」
「やるな。お前もついに男になったのか」
「欲しいなぁ……俺も」
「まさか大和……お前……」
「悪い、俺には……無理だ……」
「シュンイチ……」
「いつか強く願ってた。こんな幸せが来るってな」
「私……貴方のことが……!!」
「俺は……お前のその申し入れを……」
次回、『ラブレター』編。




