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Magicians Dream  作者: ransu521
第二部 新学年
89/139

66,校長室にて

Side???


あの戦いの後、俺は宣言通りに校長室までやってきていた。

一応今回のことについてすべてを話す為、リーダーである俺が一人でやってきたのだ。

トントン、と扉を叩くと。


『構わん。入るがよい』


という、渋い声が返ってくる。

……考えてみれば、これが校長と会話する初めての機会だった。


「失礼する」


敬語なんかは俺には合わないし、第一校長に対して敬語を使う理由などない。

だから俺は、最初からタメ口を使って中に入った。

……中に入ると、校長が何かの資料に目を通しているのが見受けられた。

だが、俺が目の前までやってくると、


「……君か。一体何の用だね?」


読んでいた資料から目を離し、俺達に向かってそう尋ねてくる。

……怪我のことについて聞かないのは、恐らく事情を悟った為であろう。


「……アンタに、言っておかなければならないことがある。今までの事件について、だ」

「……」


校長はただ黙っているのみであったが、何も言葉を発しないということは、逆に事情をくみ取ってくれたものだと俺は勝手に判断した。

……そして、俺は今までの事件について、ありのままを語った。

もちろん、この学園のシステムについても、動機についても話した。


「……そうか。この学園のシステムが」

「ああそうだ! いつか言ってたな……この世界は成績がすべてじゃないって! だったら、この学園でもそれを適用してくれよ!! そうすれば、アイツが自殺する必要性なんて発しなかったんだから!!」

「……お主は、あの事件の続きを知らぬのか」

「……え?」


校長から発せられた、まさかの言葉。

あの事件の……続き?

どういうことだ……アイツは屋上から転落して、そのまま……。


「あの子の身柄は事情があって別の組織に移転されたのだが……彼女はまだ、息をしておるぞ?」

「!?」


そ、そんなバカな……!!

あり得ないだろう、そんなの!!

俺はこの目でアイツが転落して、命を落としている所を見てるんだぞ!?

なのに……何でアイツが生きていられる!?

あの高さだったんだぞ!?


「……そうか。これは冗談なんだな。そんな冗談吐きは……そんなの余所でやれよ!」

「冗談なんかではない。それなら、その証拠に写真を見せてやろう」


写真……だと!?


「つい最近までの容体を確認する為に、私達の方で写真を撮り続けていたのだが、まさかここで役に立つとは思っていなかった……」


そんなの……そんなのあり得ないじゃないか!!

だってアイツは……アイツは……!!

あいつはすでにいなくなってるはずなのに……!!


「……これが、証拠だ」

「……あ、ああ……!!」


そこに写っていたのは、女性がベッドの中で眠っている光景だった。

黒くて長い髪の少女が……目を閉じて、眠っている。


「かれこれ一年は眠り続けているがな、この少女はまだ生きている……病院がどこにあるのかまでは教えてはやれぬが、これで分かったであろう? お主の復讐は……単なる勘違いであったと」

「け、けど……!! ならばどうして公式では死んだことになってるんだよ!? だって変じゃないか!! 葬式までやって、火葬場まで行ったんだぞ!? なのにどうして……どうしてアイツは、今でも病院に入って治療を続けているっていうんだ!?」

「……そうしなければ、ならなかったのだ」

「何でだよ……何でなんだよ!?」


そして俺は、校長から衝撃的な一言を聞いたのだった。


「彼女は……目を覚ましたとしても、もう二度と、前のような笑顔を見せることはない……前のような生活を送れる可能性が極端に少ない。それが、“悪魔憑き”の末期症状まで至ってしまった者の、末路なのだから」

「……“悪魔憑き”だと?」


……アイツ本人が望んでそれをやったとは思えない。

ならば……裏でそれを手引きしてた奴がいるってことか!?


「……それはお主の目で直接確かめるのだな。私はそこまでは知らぬ」

「ああ……そうさせてもらう! アイツの恨みを直接この手で晴らす為に……俺はその黒幕とやらをぶっ殺してやるよ!!」


そして俺は校長室から出て行った。

……頭の中に、もやもやを残して。













次回予告


「ついに、ついに俺にも春が!!」


「アンタだけは絶対にないと思ってたのに……」


「やるな。お前もついに男になったのか」


「欲しいなぁ……俺も」


「まさか大和……お前……」


「悪い、俺には……無理だ……」


「シュンイチ……」


「いつか強く願ってた。こんな幸せが来るってな」


「私……貴方のことが……!!」


「俺は……お前のその申し入れを……」


次回、『ラブレター』編。

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