63,決戦の幕開け
「……え?」
驚きの声は、間違いなく俺だけのものではなかったはずだ。
なぜなら、この教室の中にいる誰かが、今この場で銃を撃つことなんて考えられもしなかったからだ。
余計な真似をしたら、優奈が殺される。
そんな状況下におかれて、一体誰が銃を撃つというのだ?
その銃弾は、俺の頭に振り下ろされようとしていたナイフを弾き、遠くに飛ばす。
その瞬間を、ソイツらは逃さなかった。
「おとなしくしろ!」
「がはっ!」
鳩尾に繰り出される、一撃。
……何をしてるんだ、コイツらは。
まさか、人質がいることを分かっていないで……。
「や、やめろ! そんなことすると、植野の妹が……」
啓介がそう言って、たった今教室に乱入してきた連中に忠告する。
すると、満面の笑みを浮かべた……誰かが入ってきて。
「大丈夫だよ。人質は私達生徒会がちゃんと保護したから♪」
「さ、早乙女!?」
間違いない。
そいつは間違いなく、生徒会会長である、早乙女蜜柑その人であった。
けど、生徒会で保護したって……。
「言葉通りの意味ですよ。僕達が先ほど視聴覚室に向かい、人質を捕えていた数名と格闘、後に人質を救出したまでです」
「視聴覚室の中にいた人達は私達の方で確保しているよ。後はこの教室の中にいる人達全員を捕獲するだけ」
「……余計な真似してくれてんじゃねえか、生徒会の連中よぅ」
早乙女からの報告を聞いていたリーダー格の男が、怒りを全身で表現する。
肩がふるえ、表情は段々と怒りその物を表現するかのようになる。
……怒りを買っちまったみたいだけど、優奈が無事に解放されているとなると、話しは別だ。
「……おい、晴信。あの男をちょっくら倒してくれ。俺の身体に呪縛かけてやがるんだ」
「あ、ああ!」
晴信に俺はそう指示を出す。
すると晴信は、ファイアボールを繰り出し、その男に攻撃する。
攻撃は当たらなかったが、俺にかけられていた魔術の方は、集中力が切れた関係もあるのか、すぐに解除された。
「瞬一、大丈夫!?」
「瞬一君、どこか怪我とかしてませんか?」
葵と春香が、俺を心配するようにそう言ってくる。
それに対して、俺は笑顔で大丈夫と答えた後、真剣な表情で相手を見つめる。
そして、言った。
「さっきはよくもやってくれたよな……ここからは俺達の反撃の時間だ。覚悟しろよ、テメェら」
「……いいだろう。俺達はここで負けるわけにはいかないんだ。ここまで来た以上、もう引き返すことだって出来ない! 後は前に突っ込むだけだ……お前達と生徒会を倒して、俺達の正当性を訴えてやる!! そして校長に復讐を……この学園に復讐を!!」
「……復讐、か」
早乙女は、呟くようにそう言った。
その呟きは、もちろん小さなものであった為に、俺でもなかなか聞きとることが出来なかったが。
何だか寂しさを含んだような、そんな呟きだった。
「……行くぞ。覚悟は出来たよな?」
「もちろん……」
「いつでも構わないぜ?」
「優奈を酷い目に遭わせた分……私の怒りがどんどん蓄積されてるの。今すぐ晴らさせてもらうわよ!!」
大和・晴信・刹那が答える。
他の奴らも、言葉こそないけれど、みんなやる気だ。
「それじゃあ……行くぜ!! 大切な人達を、この学園を守る為にも!!」
そして戦いが、始まった。