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Magicians Dream  作者: ransu521
第二部 新学年
85/139

62,復讐

「おい……今の気分はどうだ?」

「ああ……最悪な気分だな。お前達に反撃することも出来ずに、こうしてただ堅くて冷たい床で寝転がらされているなんてな」


男に尋ねられて、俺は素直に答える。

……最悪な気分だった。

何で俺がコイツらのいいなりになってこの場に寝転がらなければならないのだろうか。

……今すぐにでもコイツらを殴り倒したい。

そんな衝動に駆られて、しかしそれをやると優奈の命を取られてしまう。

故に、俺は動けない。


「くそ……卑怯だぞお前達……」

「それに……君達はどうしてこんなことをするんだい?」


俺もずっとしたかった質問を、大和がしてくれる。

リーダー格の男は、しばらく考えるような素振りを見せ、それからこう言った。


「……この学園に対する、復讐。理不尽なシステムを作り出したこの学園に対する、俺達からの復讐だ」

「理不尽なシステム……?」

「この学園は成績によってクラスが分けられるよな。Sが一番頭がよくて、Gが一番頭が悪い。頭だけで決まるわけじゃない……下のクラスに行けば行くほど、魔術もへたくそだっていうことだ。これ以上救いのない奴らが集まるようなクラス、それがG組だった。そして、そんなG組に……俺の昔の友人もいた」

「昔の、友人?」


何でそんな周りくどい言い方をするのだろうか。

別にソイツは今でもこの学園に通っていることだろうに。


「ソイツはG組にいるということで、周りから迫害され続けた。今までBとかC組にいたアイツは、その年のクラス分け試験で、いきなりG組にまで突き落とされたんだよ。それがちょうど一年前……俺達が高校二年の時だった」

「……」


俺達は余計な口を挟まずに、男の話しを聞いていた。

……この男、何か事情を抱えているのか。


「お前には分かるまい……俺達の苦しみが! 俺達下のクラスが受けてきた扱いを、お前達のようにS組にいるような連中に理解出来るわけがなかった!! アイツはお前達のような上位クラスにいる連中に、いじめを受け続けた。元からG組にいたんならそんな扱いは受けなかったはずだ。けど、いきなり落ちてきたことをネタに、お前達のような奴らが、ソイツをいじめてきたんだよ! それは俺にまで飛び火した。けど俺はアイツをかばう為ならそれでもいいって思った!! ……けど駄目だったんだよ。結局アイツは家族にまで見放されて、アイツはそのまま……ある日自宅マンションの屋上から、身を投げて……そして……」

「……」


……ただ黙っているしか出来なかった。

確かに、この学園のシステムだと、魔術が下手なやつや頭が悪いやつはG組に落とされるシステムとなっている。

……例え前学年でいい成績を誇っていたとしても、次の学年に上がる際のクラス分け試験で失敗してしまえば、結局無駄に終わってしまう。

それが、この学園独自のシステムだった。


「だから俺達は復讐することにした……この学園を、内部からブチ壊していって、そしてこんな学校なんか、潰してやる……上位クラスにいるような奴らはみな、この手でぶち殺してやる!!」


……だが、男の怒りの矛先は、見当違いなものであった。

だから、余計に俺の堪忍袋の緒が、切れた。


「甘ったれてんじゃねえぞクソが……そんなの余所でやれよ! この学園でするべき行動じゃねえ!!」

「なっ……!!」

「俺達はな、確かにS組にいるような連中だ。けれど、俺達は決してお前達をバカにするつもりなんて毛頭もねぇ!! 努力してきた結果をバカにするなんて、そんなの間違ってるだろ!!」

「けど、それをバカにしてきたのがお前達なんだ!! ならば、俺達はお前らを殺すだけだ……ここに集まってる連中のほとんどは、成績のことでバカにされてきたような連中ばっかりだ。学歴社会という壁が生んだ格差社会の中で、屈辱を強いられてきたような連中ばかりだ! みんな苦労してきたのに……誰にも認めてもらえない。ならば残る手は、反逆することだけだろうが!!」

「どうしてそこから反逆に繋がった!? まだ他にもやることがあったはずだ!!」

「もういい、お前の言い分なんて聞いていても何にも面白くない、三矢谷瞬一、お前はここで、死ね!!」

「世の中は成績がすべてなんかじゃない!! それだけはキチンと理解しておけよ!!」

「成績がいいお前に言われたってな……全然説得力がねぇんだよ!!」


男のナイフが、頭上から振り下ろされる。

……ああ、ヤバい。

このままじゃ俺、死ぬかも。


「しゅ、瞬一君!!」

「……瞬一、避けて!」

「織、月夜……」


無理なんだよ。

どこでかけられたのか知らないが、縛り付けの魔術をかけられていて……身体を動かすことが出来ないんだ。

さっきまでは満足に口を開くことが出来たが、今ではそれも叶わない。

……終わった。

俺はもう、完璧に終わった。

そう諦めかけていた、その時だった。



ドン!!



「……え?」


一発の銃声が、教室の中に響いた。
















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