58,衝撃的な知らせ
「お前、三年S組の魔術格闘部の奴だよな?」
「え? あ、ああ、そうだけど……」
何なんだ?
俺達に一体何の用が……。
「リーダーからの伝言だ。この事件に関して無駄な行動をするんじゃない、ってな」
「なっ……!」
リーダー、だと?
だとしたらこいつ、ここ最近で起こってる通り魔事件の犯人グループの内の一人ってことか!!
「おい、お前! どうしてこんな事件ばかり引き起こしてる! お前らのリーダーって言うのは誰なんだ!?」
「それはおいおい分かることだ。別に今言う必要はないはずだ」
「これは立派な傷害事件なんだぞ! 今すぐ生徒達を傷つけることをやめろ!!」
「……お前らが言えた義理じゃねえんだよ、もう。事態は最悪な所まで達してるんだ。余計な口をはさむんじゃねえよ」
「!?」
な、何なんだこの殺気は!?
……あり得ないほどに、強い。
今まで経験してきた中でも、強さの面でも、数の面でも明らかに上回ってる。
……何者なんだ、コイツら。
そして、他の奴らはどこに隠れている……!!
「暴れない為に他のメンバーも連れてきたってわけだ。悪いが落ち着いて話を聞いてもらおう」
「……ああ」
男は俺にそう交渉をしてきた。
そうしてきた以上、俺は黙ってそれに頷くしかなかった。
「……さて、君達にもう調査はやめろと言っても、こうして俺達が目の前に現れてしまった以上、どうやったところでお前達は犯人グループである俺達を捕まえようとするよな?」
「当り前だ。それが俺達の目的なんだからな」
これ以上事件を広げたくない。
……心から、俺達はそう願っている。
だから危険を承知で、この事件を調査することにしたんだ。
「だが、俺達としてはもうこの調査をやめてほしい……さて、互いの利害を一致させる為に、俺達が取る行動は次の内どれだ?」
「……え?」
男は、疑問形式で言葉を告げる。
右手を突き出して、指を三本立てる。
三個答えはあるということだろうか。
「ひとつ、直接交渉に出る。
ひとつ、お前達と戦う。
ひとつ、お前達の仲間の内の誰かを……こちらで捕獲する」
「!? お、お前達……まさか!?」
俺がその真相を確かめようとしたその時だった。
ピリリリッと携帯電話が鳴る。
「……出ろよ。きっとお前の仲間からだぜ?」
「……」
言われた通り、俺は携帯電話をポケットの中から出す。
開けて液晶画面を確認してみると、その電話は……大和からのものだった。
俺は通話ボタンを押し、耳に当てて、
「もしもし、大和か?」
『た、大変だ!』
珍しく大和が取り乱したかのような電話をかけてくる。
俺がその先の言葉をせかす前に、大和は焦った口調でこう言った。
『優奈がさらわれた! 返してほしくば、今から派遣するメンバーについてきて、交渉をしてやるって!!』
「……分かった。俺も今その犯人グループのメンバーとやらと一緒に行く。そいつについていけばいいんだな?」
『……恐らく』
「……ありがとな。じゃ」
ピッ。
俺は通話を切り、もう一度携帯電話をポケットの中に突っ込む。
そして、男を睨んだ。
……俺が睨んでいると分かっているのかいないのか、不敵な笑みを浮かべて、やがてこう言った。
「……ついてこいよ?」
「くっ! ……お前がアイツを……!!」
悔しさがこみ上げて来ていた。
しかし、今ここで晴らしたところで、結局は周りに隠れているだろう他のメンバーにやられるだけだ。
……悔しいが、ここは言われた通り大人しくついていくしか方法がなかったのだった。




