8,親友
「え……殺されてる?」
「……力を暴走させられて、私の場合は……『組織』と呼ばれる人達にその力の暴走を止める為に……殺されました」
「……」
『組織』って、確か大和君達が所属している組織のことだよね?
……まさかこんな所にも、『組織』とわずかながら関連がある人がいたなんて……。
「……けど、そのおかげで試練を受けることが出来たんだよね? だったら何で試練を放棄してこの世界に居残ることにしたの?」
「……アルカ様からお話は聞いたようですね」
「……ごめん、先にその話は聞いちゃった。けど、どうして試練を受けないの? 試練を受けて……やり直そうとは思わなかったの?」
湧きあがる疑問。
そして……これらの疑問に、麻美ちゃんは、答えた。
「私は……この試練を受けるべきではないんです。なぜなら……例え元の世界に帰ったって、帰る場所がないんです。もう、帰る場所が……帰ってきて、迎えてくれる人が、いないんです」
「……」
それって、元の世界には居場所がなくて。
まるでもう……唯一の帰る場所も……とりわけ、帰ってきて迎えてくれていた人も……もういないみたいだ。
「私は、この力をみんなの前で発現させてしまったせいで……居場所を失ってしまったのです。こんな力がある子と関わってたら……自分はいずれ、殺されるのではないかという不安が植え付けられてしまったからです」
「……」
確かに、いつ暴走するのかわからない力の持ち主と一緒に暮らしていたら……いつその騒動に巻き込まれるか分かったものではない。
そんな力を持ってるような人が周りに一人いたら……その子はどうなる?
答えは分かっている……孤独に追いやられる、だ。
一人だけみんなの居場所から端っこの方に追いやられて……その結果、そこでは孤独となってしまう。
そんな生活をしてきたのだ……そんな生活を送ってきた麻美ちゃんにとって、この世界がどれほど温かい世界だったことだろうか。
「で、でも、迎え入れてくれる人が、必ずいるはず……」
「……私が一度、ほんの数分だけ下界に降りることを許された時に、その人は、私の仇をとって……その時に……」
「……」
もはや麻美ちゃんにとって、帰るべき場所は、ここなのだ。
ここ以外に、帰るべき場所など……ないのだ。
それは紛れもない事実であり……麻美ちゃんにとっては、ようやく手に入れた幸せなのだ。
そんな幸せを……すぐには壊したくないと思うのが、人間として当たり前の思考だと思う。
……私から言えることは、もうない。
すなわち、麻美ちゃんには……何を言っても無駄だとうことだ。
言うだけ迷惑なのだ。
「……重くなってしまって、本当にすみません」
「う、ううん! 最初に始めたのは私だから……謝るなら私からだよ!」
「……本当に、申し訳ございませんでした」
……この子、自分で決めたことは絶対にねじ曲げないタイプの子だ。
なら、謝るのは私の方じゃない。
「……ううん、もういいの。その代わり、一時的にでもいいから……私が麻美ちゃんの居場所になってもいいかな?」
「……え?」
目を見開く麻美ちゃん。
構うものか……私はそう思って話を進める。
「……私はいずれ、この世界から立ち去る。それが何時になるのか、ひょっとしたらずっとこの世界で過ごしていくのかは……私にも分からない。けど、せめて私がここにいる間だけでも……私は貴女の居場所になっても、構わないかな?」
「……」
黙りこみ、考える素振りを見せる。
そして、麻美ちゃんは答えを出した。
「……私の方こそ、よろしくお願いします」
「……ありがとう!!」
そして、この日を境に……私と麻美ちゃんは親友となった。