55,とある噂
Side???
「……お前ら、準備の方は進んでいるのか?」
「ええ。徐々に人を集めていっています」
「……そうか。それならいいんだが」
「けどリーダー、本当にこんなことをして大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だ。俺達は元々学生だぞ? こんな運動することなんざ、当たり前の権利だと思うけど?」
「それはそうですけど……だからって」
「これは俺達の権利を認めてもらうための、正当防衛だ。変な方向に思考を向けるんじゃない。これは俺達の正当防衛だ」
「……そうですね。分かりました」
彼らは、反逆を始める。
理不尽なシステムを採用した、この学園に……。
「今日もいい天気だなぁ」
季節も六月になったことで、ここ最近では梅雨に入った関係もあり、雨であることが多かった。
しかし、この日は快晴。
昨日までは雨が降っていたのに、今日は晴れたのだ。
もっとも、明日はまた雨が降るので、いうなれば神様も面倒くさがりなのかもしれないな。
「お前じゃあるまいし。それはないだろう」
「しかも、単なる気まぐれといったほうが正しいんじゃないかな?」
……大和にならともかく、晴信にダメだし喰らうとたまらなくむかつくんだよなぁ。
後でライトニングぶっ放しとくか。
「まて瞬一。お前の顔が何やら変なことを考えているような表情を見せているんだ。今すぐその表情をやめてくれ」
「そんなこと言われても……なぁ?」
「いや、マジでこえぇよ!」
面倒な晴信は置いといて、とりあえず今日はいい天気だ。
きっと何かいいことが起きることに違いない……そう考えていいことが起きた試しなんて一度もないのだが。
「おはよう、瞬一」
「おう、おはよう」
そんな時。
ちょうど葵達も登校してきたようだ。
葵のほかには、織・春香・月夜の姿も見受けられた。
ちなみに北条は、だいぶ前に来て大和にベッタベタだ。
何でも、この前の体育祭の代休の日に何かがあったらしい。
詳しいことは聞いていないが……おそらくあの2人に何かしらあったのだろう。
聞くだけ無駄……ていうか聞きたくない。
「ついに北条にも恋のライバル、か」
「……どういうことだ、啓介?」
啓介がそんなことをつぶやいたが、それ以上は何も言うことはなかった。
……どうせ黙り込みを決め込むのなら、最初からほのめかすような発言はしないでくれ。
「そっか……とうとう真理亜ちゃんにもライバルが現れたんだね」
「……何の?」
「それじゃ内緒だよ。鈍感な瞬一に言ったとしても、分からないだろうしね」
……なんだろう。
葵の言葉が心の奥底までズブズブと突き刺さるような感覚が。
しかもまわりの奴らはフォローする気はまったくないようだし。
向かうところ敵だかけじゃねえか(こんなことわざは存在しないからな。一応言っとくけど)。
「ところで、最近ちょっとした事件が起きているのを知ってるか?」
「事件?」
話題提供をするつもりで言ったのか、大地からそんな話題が出された。
それにしても……事件?
「それってどういうことだ?」
俺はその話題に乗った。
すると大地は、こう話し始めたのだった。
「最近、この学園内にて……以前起こったような形の通り魔事件が発生しているらしい」