50,孤独からの解放
「……もう、釈放されてたんだね」
「はい……何でも、私の力の暴走は、“悪魔憑き”による力の暴走であって、意図的なものではないと判断されたので、本当に早い時間に解放されました」
「……そっか」
不思議だ。
由良が釈放されたという知らせを聞いて……僕は本当にうれしいと感じた。
それだけ、僕は由良のことが大切だということだろう。
仲間として……親友として。
まだこれが二回目の遭遇になるけど、僕は由良のことを親友だと思っていた。
あの日、由良が僕に助けを懇願してくれたから。
孤独は嫌だと、言ってくれたから。
だから僕は、由良を救うことが出来た……それが、たまらなくうれしかった。
互いに手を伸ばしあったからこそ、由良は救われた。
いつまでも、闇に心を囚われることは、なかったのだ。
「それにしても、由良はどうしてここに?」
「えっと……やることがなかったので、ただ街の中を散歩していただけなのですが……」
「……そっか」
僕と同じことをしていたということか。
つまりは、あてのないただブラブラするだけの、一見無意味そうな散歩をしていた。
はっきり言って、本来ならこの散歩を続けている意味はない。
けれど、僕は続けたいと思って、この散歩を続けていた。
そして、由良のことを見つけて……もう少しアレンジを加えたいとも考えた。
そのアレンジとは。
「……なら由良」
「はい、なんでしょう?」
「……一緒に、二人で散歩しないかい?」
「……え?」
由良の驚くような声が聞こえる。
無理もないだろう……会って二度目の僕に、一緒に散歩しに行こうなんて言われているのだ。
さすがに相手が僕でなかったとしても、同様の反応を示すことだろう。
「ああ、いや……嫌なら別にいいんだけど、僕もちょっとした気まぐれで……」
「……いえ、私、その申し入れが嬉しくて、つい……」
「うれ、しい?」
僕の申し入れが、嬉しかった?
それは……どうして?
いきなりすぎて気味悪がられるかななんてことも考えていただけに、由良のそんな反応は偉く新鮮みがあるように思えて仕方がなかった。
「かつて私は闇に堕ちました……そのおかげで、私の周りには誰ひとりいなくなってしまいました。戻れない闇の中で、私は一人であがき続けて……結局最後には、勝手に暴走して、勝手に自滅しそうになっていました。けど、それだけならまだしも、私は世界を巻き込もうとも考えていました。こんなにもつまらない世界なら、滅びたって一緒だって、そんなマイナスなことまで考えていました……」
「由良……」
「ですが、そんな私を……大和君は救ってくれました。正直最初は怖いと思っていたのですけど……大和君はそんな人じゃないって分かってから、私の心は何だか少し軽くなりました……この人に出会えて、私は心か良かったって感じたのですから」
由良は、今まで孤独に囚われていた。
自ら意図的に孤独の世界に隠れていたと言っても、さすがにここまで来ると……。
「……由良。君に伝えたいことがある」
「は、はい。何でしょうか?」
だから、これだけは伝えないといけないと僕は考えた。
そして、今がその時なのだろう。
だから僕は、由良にこう告げた。
「君はもう一人なんかじゃないんだよ」
「!!」
由良の驚いたような顔が見受けられる。
その言葉を聞いた由良は、泣きだして、僕の胸に飛び込んできて……。
「あら? 大和君じゃない!!」
その前に、背後からこんな声が聞こえてきた。
その声はまさしく……北条真理亜のものだったのだ。