46,いざ行かん!!
『さぁていよいよ始まります! 午前中最後の競技こと、旗取り合戦!! この競技では三年生達が命をかけて戦います!!』
「あれ? これって命の危険を伴うのか?」
「事と次第によるでしょうね」
北条に自然と尋ねていた俺は、この競技のもつ危険性を改めて認識させられるのだった。
『それでは始めます……よ~い』
パン!!
競技開始の合図が響き渡り、俺は何とかスタートダッシュを切る。
俺は旗を取りに行く係なので……少しは気が楽というか。
「瞬一、ここからは力比べだよ?」
「ああ……分かってる!!」
この旗取りは四色混合で行われる競技だ。
だからどこかの色の旗をいち早く取れば勝ちということになる。
……しかしこんな危険な競技に女子を入れるかねぇ、普通。
「まぁ、もし女子にぬけろと言ったところで、女子差別だどうのこうので俺達が責められることになるんだろうからな……」
面倒だが、ここは素直に相手陣地を攻めに行くことだけを考えよう。
……しかし、どこの組に行く?
「……青組だ! 青組を攻めに行くぞ!!」
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
G組の奴らの声が響き渡る。
……そう言えばG組は体育会系の奴が多いんだったな。
これは行ける……行けそうな気がする!!
しかも良く見れば、青組の方は誰も行っていないらしい。
油断しているはずだ……今がチャンスだ!!
「おっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「赤組が来たぞ!!」
「迎え討て!!」
青組の奴らが一斉にこちらの方を振り向いてくる。
……行ける、行けそうな気がする!!
……本当になんとなくだけど。
「そりゃ!」
「ふぎゃ!」
壁の奴らが数人いたので、何とかその間を掻い潜る。
だが、その途中で断念せざる負えない人も何人か現れる。
「だが……勝つまでは自分達の所に帰れない!!」
別にそういうわけでもないのだが、何故だか俺達の間でそんな共通認識が流れていたのだ。
そしてその共通認識が……不思議な結束力を生んだ。
「飛んでけ!!」
壁に押された内の何人かが、その壁を通り越す為に、何人かの人を上へ投げ飛ばす。
……いやいや、もはやこれ人間技じゃなくね?
さすがはG組……体育祭に命をかける奴らが揃っていやがるのか?
「シュンイチ……ここを通すわけにはいきません」
「おっと……って、アイミーか」
「俺もいるぜ!」
「……さっきトランポリンで飛んできたかと思えば一瞬にして倒された小野田じゃねえか」
「その話は忘れようぜ!」
俺の目の前には、小野田とアイミーが立っていた。
二人とも……俺を通す気はなさそうだ。
「面倒なことになったなぁ……どうするか?」
とりあえず選択肢としては……。
・小野田を倒す
・アイミーを説得する
・逃げる
この三つか。
「おらおらどうした? さっさと動かねぇのか?」
いや、この場合この三つの選択肢の内二つは完遂しなければならない。
そんなわけで、まずは一番上の選択肢から。
「というわけで……死・ね♪」
「へ? ……ぐはぁっ!」
よし、まずは小野田撃破。
……いっとくが、ちょっと足が滑っちゃっただけだからな。
「しゅ、シュンイチ……」
「なんだアイミー。俺は別にお前に乱暴する気はねぇぞ?」
「い、いえ、そうではなく……とにかく、ここを通すわけには……」
「……今度どこか二人で出かけてやるから……それでここを通してはくれないか?」
「え? ……あ、はい……///」
顔を赤くして、アイミーは承諾した。
というわけで……。
「すまないなアイミー!」
俺はアイミーの横を通り過ぎ、旗を取りに向かった。
結果。
旗取り合戦は俺達の勝利で幕を閉じた。