45,体力もつか?
「さて、そろそろコイツと決着をつけないとな……」
「そうだけど……どうする?」
「どうするって言われても……」
小野田はぶっとばされたし、残るは俺と大和のみ。
他の参加者はすでにリタイアしてるしな……さてここは。
「ブルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「やっぱり途中退場は許されない?」
「当たり前だ! 俺のこの渇きを癒せる奴が現れるまでは、俺は消えねぇぞ!!」
……どうしよう。
もう俺、ゴール出来なくてもいいかもしれない。
俺、ス○ンやカ○ルじゃないからさ、こんな奴相手に出来ねぇよ。
斬空天翔剣なんて出来ないから……あ、もろ名前出してるな、これ。
「お前には帰るべき世界があるだろうに……こんなところで油売ってる場合じゃねえだろ」
「油売ってるわけじゃねえ! 俺はただ、強い奴を探してるだけなんだよ!!」
……面倒だな、コイツ。
ああいえばこういう、いわば人間として一番相手にしたくないタイプの人間というべきだろうか。
何せ斧持ってて、問答無用で俺のことを倒そうと心がけるしよ。
「まったく……面倒な奴だ。というか、ここから逃げたい……」
逃げようにも、大和は一人でもこの斧男に突っ込んでいきそうだしなぁ。
一人にさせると、後で北条に殺されそうで嫌だ。
……仕方ない、相手してやるか。
「お前……俺と大和を敵に回したことを後悔するんじゃねぇぞ?」
「ふん! ……相手になるか知らねぇが、ぶち殺してやるよ!!」
そして、俺と大和は協力して、この斧男と戦った。
「「……」」
結果。
俺と大和は、コイツに負けた。
しかも、勢いよく水に落とされた為に、服はびしょ濡れ。
散々だな……畜生。
「こんな相手と一回きりしか対戦できないのもちょっと寂しいね」
「けどまぁ、二度と相手にしたくねぇよ……正直、クリエイターや悪魔化メルゼフなんかよりも強かったぞ。一番強かったのは、天使化葵だったけどな」
「そんなに私の力強かった?」
「ああ……正直ただでさえ強い力が更に強くなっててやばかった」
あの時は正直勝てるとは思っていなかった。
本気で殺されるのではないかと思ったのは、この時が初めてだった。
死ぬのではないかということで考えれば二度目に当たるが。
「……んで、クライマックスその2の到来か」
「……その2?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
首をかしげて尋ねてくる月夜に向かって、俺はそう答えた。
……そう、俺にとってのクライマックスその2。
それこそがこの競技、旗取り合戦だ。
もう他の組から感じられる気配が、完全に殺気だけとなってるし。
もう嫌だ……早くこの場から立ち去ってしまいたい。
「旗取り合戦かぁ……」
「なんだか危険そうな競技ですね……」
「そうだな……そして、ムフフな競技……」
「お前、いっぺん死んで来い」
不安そうな表情を見せる織と春香に加え、不気味な笑みを浮かべる晴信。
……バカは死ぬまで治らないんだよなぁ。
「ハァ……午前からいきなりこんなに詰め込むとはなぁ。大丈夫かなぁ、俺」
体力がもつか分からなくなってきたぜ……まったく。
午前最後の競技とはいえ、なかなかに辛いぜ……。
俺は目の前の競技での勝利よりも、自らの身体がもつかどうかを心配しているのだった。