43,VS卵博士
「しゅ、瞬一!?」
「シュンイチ……大丈夫ですか!?」
葵とアイミーの声が聞こえる。
……何のこれしき!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
こんなの、去年の死にかけた時の状況に比べたら随分と楽なもんだぜ!
落ちた所で水の中に落ちるだけだしな!
「そらよっと!」
俺はなんとか、というか道に手を乗っけていたのもあって、すぐに道の上に戻る。
そして、そのまま一気に駆け上った。
「よしっ!」
晴信のそんな声が聞こえてきたような気がしたが、今は気にしている暇もない。
とにかく……このバカみたいにでかい壁をどうしよう。
「……ここで魔術を使うか」
障害物競走では、魔術の使用が認められているはずだ。
だから……ここで足強化の魔術を使用したところで誰もとがめる人がいないはず。
というわけで、遠慮なく使わせてもらいました。
「脚力、強化」
そして、俺は一気に壁を駆け上っていく。
傾斜15度がなんだ……こんなの楽勝楽勝!!
「凄い……さすがは瞬一」
「三矢谷……お前、大和の次のライバルに認定してやるよ!」
隣では、未だに壁を登りきれていない……それどころか時々下に落ちている小野田がいた。
……こんな奴のライバルに認定されたところで、果たして喜ぶ奴がいるのだろうか?
「少なくとも、俺はごめんだ」
というわけで、小野田の発言は無視して、次のギミックへ。
「……忘れてた。次は卵博士だ」
やれやれ、面倒な奴が相手に選ばれたものだ。
……ハリネズミを倒す目的はいいのか?
「フォ~フォフォフォフォフォ! 今回は特別にワシが来てやったぞい!」
「うっさいから即刻消えてくれ。後、ソニックはどうでもいいのか?」
「あやつはいずれワシが倒す……今は貴様らを倒すのが先じゃ」
周りを見れば、すでに卵博士によって倒されたと思われる生徒が数名いた。
……う~む、今回ばっかしはさすがにピンチ?
「いやいや、大丈夫だろ。なにせこっちには、大和がいるし」
何故かはよく分からないけど、こういった敵は一回の競争に一体しか登場しない。
すなわち、協力して倒すのが一般的な方法となっているわけだ。
誰かが倒すのを待ってるのもいいのだが……なんかこの惨状を見てみるとそれも叶わなそうだ。
「てなわけで……一瞬でつぶします」
「いつでもかかってこい!」
「それじゃあ遠慮なく……スパークアロー!!」
面倒なんで、呪文部分はパスで。
持続時間は短いけど、それで十分だ。
目の前に出現した魔法陣から、弓と矢を取り出して、卵博士に向ける。
反対側では、大和が風の魔術を利用して何かしらをしているところだった。
「……今回ばかりは君に協力するしかないようだね、瞬一」
「そうだな……協力あっての鬼退治ってやつだな」
今回大和とは敵同士の関係のはずなのだが(色は一緒なので、厳密に言えば味方でもあるのだが)、今は目的が同じということだけあって、一緒に戦うこととなる。
……卵博士、かなり同様。
「というわけで……死ね♪」
「どわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
雷を帯びた弓矢と、無数の風の刃によって、その身を切り裂かれた卵博士は、そのまま透けるようにその姿を消した。
……なんだ、割と弱いじゃん。
「さて、先を急ごう」
まだまだギミックは残っている。
俺と大和は、卵博士が消えたのを最後まで確認すると、そのまま次のギミックまで向かったのだった。