40,女の嫉妬は怖い
続きまして、本年度から始まった競技の一つでもある、全学年対抗綱引き。
……こんな映えないような競技を考えたのは果たして誰なんだろうか?
「何を言う……綱引きも結構盛り上がる競技だぞ?」
「……ヨダレを吹け、ヨダレを」
とりあえず何かよく分からない興奮をしている晴信は置いといて、とにかく今は観戦だ。
ちなみに、この競技には月夜や織、春香に真理亜、葵など、女子メンバーはほぼオール出場。
プラス、啓介や大地などの男子生徒がちらほら。
他のクラスはどうだか知らないが、とりあえずはそういうことになっている。
……ちなみに、晴信の手には、先ほどパン食い競争で手に入れたアンパンが握られていた。
時々晴信はそれを食べては、競技観戦をしていた。
……少し羨ましいと感じてしまったのはここだけの秘密だ。
「ん? なんだ瞬一。食うか?」
「誰がお前の食いかけなんかいるかよ……」
どうせ食うなら、女子の食いかけが欲しいぜ……食う気はないが。
誰が好き好んで男子の食いかけなんか欲しがるのだろうか……ましてや晴信だぞ?
……あ、刹那なら嬉しがって、しかし素直に言葉が言えないから、顔を赤くしながら何かしらの毒を吐いて、そのままもらっていくんだろうなぁ。
「……何か変なことを考えてないかしら?」
その時。
背後より謎の殺気が感じられる……何だこの尋常じゃないほどの殺気は!?
「……って、刹那か」
「何よその反応は……それより何か変なことを考えてたわけじゃないでしょうね!?」
「まさか……てか、食いたいのか? アンパン」
「別にそうじゃないわよ……」
あれ、なんだ。
意外に普通の反応だったか……ちょっとつまらないな。
「私にどんな反応を期待してたって言うのよ?」
「いやぁ、初な反応って奴を少々……」
「残念ね。生憎私はそういうキャラじゃないのよ」
そういうキャラじゃないからこそ、期待してたのにな……本当に残念だ。
「さて、そろそろ綱引きの方が始まるかな……?」
「そうだな。せっかくだから、この三人で観戦することにしようぜ」
「いいアイデアね……晴信先輩ながら、やるわね」
「そこまでいいアイデアでもなんでもないし、晴信は格段凄いことは言ってないぞ」
とりあえず、ツッコミは遠慮して、それだけを言っておいた。
『さぁて、そろそろ戦いの火ぶたが切って落とされそうです……それでは、はじめ!!』
宮橋の声が会場内に響き、それが競技の開始の合図となった。
同時に、選手達は一斉に綱を引いていく。
……意外と燃えるな、これ。
今は赤VS青の戦いだ。
……綱引きを侮っていたぜ。
「だろ? 意外に綱引きって面白いんだぜ?」
「……とりあえず目線を女子の胸に向けるのだけはやめような?」
晴信の眼が明らかに変態のものとなっていたので、とりあえずやんわりとそう注意だけしておく。
……どうせこの後は刹那がどうにかしてくれるだろう。
「……晴信先輩、それはどういうことですか?」
「え? いや、何でお前が怒る理由が……」
「天誅!!」
「ぎゃ、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
……さらば晴信、永久に……。
ちなみに、綱引きは青組が一位で、赤は二位となりました。