39,花が似合いそうな少女
とにかく、今は花が似合いそうな少女とやらを探さなければならないな……。
とは言ったものの、月夜はすでにこの競技に参加してしまっているしな……花が似合いそうな少女って一体どんな定義なんだ?
そもそも、判定するのは誰だ?
体育祭委員の奴らの独断と偏見で決めるとでも言うのか?
「……とりあえず、ぐるっと回ってみるか」
まずは探してみないことには、競技が始まらない。
というわけで、観客席とかの方をぐるっと回ってみる。
……この借り物競走は、人を借りる場合がほとんどなので、今回だけは特別に観客席へ向かう為の階段が用意されているのだ。
俺のお題も人なので、例にもれず、この階段を使って上に上がる。
「……分かんないなぁ」
花が似合いそうな人と言われたところで、ちょいと俺からしたらよく分からないんだよなぁ。
お題変えるか?
……いや、もう面倒くさいのでそれもやめよう。
「えっと……とにかくまずは葵を探してみよう……いや葵はちょっと違うかな」
なんとなくだけど、葵は花が似合いそうな少女とはちょこっと違うような気がする。
どっちかというと……割と大人しめの少女とかが似合いそうな、そんな感じが……。
「なら、春香か? ……いや、優奈かアイミーということも考えられる!」
よし、この三人から一番近い人を探して連れて行けばOKだな?
……この中で一番近いと言ったら……アイミーか?
「よっしゃ……って、アイミー!?」
「は、はい?」
いざ探し始めようとしたら、偶然観客席に戻ってきたアイミーを発見した。
……これはかなり都合がいい。
アイミーには申し訳ないが、このまま連れて行くことにしよう。
「アイミー、俺のお題が『花が似合いそうな少女』なんだ。そんなわけで……ついてきてもらってもいいか?」
「えっと……い、いいですけど」
「そうときまれば!」
「きゃっ!?」
俺はアイミーからの了承の返事を受け取ったので、早く走る為にも、アイミーの身体を持ち上げて、お姫様抱っこのような形をとる。
……軽いな、アイミー。
「お前……結構軽いよな。本当に飯食ってるか?」
「お、降ろしてください! こんな格好……恥ずかしいです……///」
「ちょっとの間だけでも勘弁してくれ……ここからゴールに行くまでの間だけでも!」
「キャッ!」
最後まで返事を待たずに、俺は観客席から飛び降りる。
なるべくアイミーにまで衝撃が伝わらないようにして、俺は地面に着地する。
そしてそのまま……アイミーをお姫様だっこしたまま、ゴールまで一直線。
『おおっと! 三矢谷選手が留学生であるアイミーンさんを選択した!! この二人、しかしお似合いのカップルのようにも見えます!!』
「余計なことを言うな!!」
そんなこと言われると……恥ずかしくなってくるからやめてくれ。
そう心の中で呟きながらも、若干俺は嬉しさもこみ上げて来ていた。
アイミーの方はどうかと思って顔を覗き込んでみたら……恥ずかしそうに顔を赤く染めていた。
か、可愛い……いやいや、今はゴールまで走りきることを考えなければ!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そして俺は、何とか一位でゴールすることが出来たのだった……。