34,終結
それは、スローモーションのようにも見えた。
というか、決着のつけ方が……俺と千世が戦った時の決着のつけ方によく似ている。
アイミーもいつの間にか剣を出していて、この攻撃で終わらせることを考えていたようだ。
魔術なしの……正真正銘力勝負。
どちらが勝利するのかなんて……正直分からない。
けど、どっちが勝ってもおかしくはない……そんな雰囲気は、確かに感じることが出来た。
「ハァッ!」
「セィッ!」
同時に二人は切りかかり、そして……。
ガッ!
「……そこまで!!」
審判である葵の声が響く。
勝ったのは……。
「……私の、勝ちです」
「くっ……この私が、この私が負けるなんて……瞬一先輩ですら、引き分けに終わったのに……」
アイミーの剣の先が、千世の心臓部にあった。
一方で、千世の剣は……遠くの方へ弾き飛ばされていた。
ここがもし戦場だったとしたら、この一撃ですでに千世は死んでいる。
よって、この勝負はアイミーの勝利となったのだった。
「す、凄い……」
その結末に、俺達はただ驚くしかなかったのだった。
まさかアイミーがここまで強いとは……。
少しは想像出来たことながら、想像以上の力を発揮したアイミーに、俺は驚きの念を抱かずにはいられなかった。
「アイミー、お前……携帯持たせるとそこまで戦闘能力が変わるのか」
俺はただただ感心……いや、尊敬するばかり。
俺なんか比じゃないな……まだまだ技の訓練とかを積まなければならない。
「アイミーンさんが三年生じゃなかったら、入部をお願いしてたところだよ……」
「あ、アハハ……」
葵が心底残念そうにそう呟く。
確かに、アイミーが入れば相当の戦力補充となる。
けど、俺達の最後の試合に、アイミーを登録することは不可能……なぜなら、アイミーは三年生なので、今から登録することも、ましてや学校の規則によって入部することも不可能なのだ。
「何と言うか……結構理不尽だよなぁ。ちょっとの例外だってあってもいいだろうに」
「晴信……確かにそれは俺も思うが、アイミーだけ特別にしたら、他の生徒に示しがつかないだろ?」
残念だが、アイミーは正式な部員としてこの部活に入ることはできない。
けど、
「もし暇だったら……またこの部活に来てもらっても、いいかな?」
「え?」
「正式な部員じゃないけど、アイミーンさんだったら、私達は大歓迎だから」
「俺としては三矢谷と一緒にいる時間を減らしてほしいから入部して欲しくないが……けどそうなると俺が一緒にいる時間が減ってしまうし……ああもう、どうするべきなんだ!!」
……アホだな、コイツ。
小野田はもう少し頭を鍛えるべきだと思う。
「そ、その……もしご迷惑でなければ、今後もこの部活にお邪魔しつもよろしいでしょうか?」
「迷惑なわけないだろ……何せアイミーは俺達の仲間だろ?」
「!!」
アイミーの目が見開かれる。
……それほどまでに俺の言葉は驚くものだったか?
「そういうことだ。瞬一が言うことに狂いはない……お前だってわかってるんだろ? アイミーン」
「……は、はい」
俺達はすでに仲間だ。
この戦いを通して……ふたたび、いや、更に認識させられたのだ。
アイミーも、もう立派に俺達の仲間だ。
ああ……これからの学園生活が更に楽しくなりそうだ。
アイミーを交えての体育祭は、果たしてどうなるのだろうか……そういえば色々ありすぎて忘れてたが、来月は体育祭じゃないか。
次回予告
「体育祭……ですか?」
「どんな競技をやるか決めるぞ」
「リレーのアンカーはお前に決定だ!」
「面倒くせぇ……」
「こ、今年のギミックもまた凄いな」
「蜜柑、いっきま~す!」
「負けないぜ……絶対に!!」
「今年もやってきました、体育祭!!」
次回より、体育祭編が始まります。