28,聞き覚えのある声
そして次の日。
俺達は朝早くにA組の教室にやってきていた。
先にS組に入り荷物を置いてしまい、A組に赴いたということだ。
……にしても、人だかりが出来てるな。
出来るだけ早めに来たつもりなんだけどな……。
「さすがは留学生……」
「評判があっという間に広がったんですね」
隣にいる春香が反応を示す。
……まぁ、転入生ってだけでも珍しいのに、そこに留学生というブランドまでついてしまうとな……。
それだけこの状況が珍しいということにも繋がってくるか。
「でもこれじゃあ中が見えないよ……」
「その前に、その留学生とやらは中にいるのか?」
特徴を聞いていない為、俺達は留学生がどんな奴なのかを知らない。
せめて髪の色とかだけでも聞き出せばよかったかね……半分脅してでも。
「う~ん……ちょっと分からないね」
多少背が高い大和が、教室の中を覗く。
しかし、周りの人だかりが邪魔ということもあって、中がよく見えないらしい。
「せめてもう少し時間を考えてくるべきだったかね……」
「私の敵じゃなければ、誰でもいいわよ」
大和を見つつ、北条はそんなことを言う。
……よっぽど大和のことが好きなんだろうなぁ。
「まぁ、同じクラスでもない奴をそう簡単に好きになれるわけでもないだろ。何しろ、本当にきっかけが少ないからな」
「そんな中でも瞬一は着々とフラグを積み上げていってたけどな!」
「死ぬか?」
「いえ、何でもありません」
右手に雷撃を帯びせながら、笑顔で晴信に尋ねてみる。
すると晴信は、恐怖からかすぐに身を引いたのだった。
……分かってるのなら最初からそうすればいいのに。
「昼休みにしないか? このままだと見れそうになくて時間だけが過ぎちまうって」
啓介がとうとうそんなことを言い出すのだった。
……けど、確かにその通りだ。
このままだと、無駄に時間だけが過ぎてしまう。
「そうだな。後でもう一度見に……」
「だがそうはさせないぜ!」
引き返そうとしたその時。
どこからともなくそんな声が聞こえてくる。
この声は……。
「そうさ! お前らいる所に俺がいる! 風に呼ばれて参上する! その名も小野田光平なり!!」
何か、恥ずかしいセリフと共にやってくる奴が約一名。
「……帰ろうぜ」
「付き合ってらんないわ」
最初に晴信と北条が帰って行き、
「……面倒くせぇ」
「まっ、気にせず教室に戻ろっか」
大和と大地が仲良く教室に引き返し、
「……行こう、織ちゃん・春香ちゃん」
「え、ええ……」
「そうだね……」
葵が織と春香の二人を連れて行き、
「……はぁ」
啓介がため息混じりに、教室に戻って行く。
さて、俺も戻ろうかと思った時に。
「おい待てや! 転入生を見に来たんだろ?」
目の前に、超恥ずかしいセリフを述べた小野田が現れてしまった。
「……邪魔なんだが」
そいつが俺の帰り道を塞いでるから、邪魔で仕方がない。
だから俺は小野田にどくよう命令したつもりなのだが。
「どかねぇ。お前をここで帰らせたら、また後で来ることになるからな」
「なんだよ……俺達が別に何をしようと自由だろ?」
「けど、あの子は俺のものだ! 勝手に見ることは許さない!!」
……どこまでバカなんだ、コイツは。
付き合ってらんねぇ……とっとと教室に戻って予習でも。
「……シュンイチ?」
「「……え?」」
今、ものすごく効き覚えのあるような声が……。