27,とりあえずムカつくので
放課後。
何時ものように部室にやってきた俺達は……気味が悪い程の笑顔を浮かべながらこちらの方を見てくる小野田の姿を発見した。
……ムカついたので、挨拶代わりにライトニングをぶっ放つ。
しかし、小野田はそれを容易く避けた後に、
「いきなりなにすんだよ!」
「いやぁお前の顔があまりにもムカついたから……つい、な」
「『つい』で命を取られてたまるか!」
相変わらず面倒くさい奴だな、コイツは。
まだ晴信の方が素直なのによ……反応の話な。
人の良さとかはこの際完璧に無視しての話になるがな。
「にしても……どうしてそんなに機嫌がいいんだ?」
「……聞いて驚けよな!」
いまどきそんな前振りをしてくる奴がいようとは……。
けど、そういわれると少し気になってしまうのが、人の性って奴だよな。
とりあえず、何があったのかだけは聞いておこう。
「何だよ……早く言えっての」
「なんとな……俺の隣の席に、すっげぇ美人の留学生がやってきたんだ!!」
「「「「「「……」」」」」」
恐らくその場にいる人のほとんどから、軽蔑のまなざしが飛んできたと思う。
なんだ……そんなことか……って。
「結構重大な話しですよね?」
「けど、留学生が来るなんて話、聞いてなかったですけど……」
「確かに……S組じゃないなんてなぁ。校長もさすがにそこらへんは配慮したってことか?」
留学生って言うほどなんだから、S組に来てもおかしくはない学力は持っているというわけだよな?
なのに、クラスは一個下のA組。
特に深い意味があるわけではないのか……それとも、前にS組には転入生の月夜がやってきた関係もあるのか。
とにかく、その留学生ってのは若干気になるな。
「どんな留学生なんですの?」
千世も気になるようで、小野田に向かってそう尋ねた。
すると小野田は、自慢するかのような表情を見せ、
「とにかく美人なんだよ! もうこの世のものとは思えないほどに……あの子はどんな服を着ても映えるね、絶対!」
「けどよ、二学期のクラス分け試験で違うクラスになる可能性もあるんじゃねえのか?」
「それはそれ、これはこれ! 今はとりあえず青春を謳歌するまでだ!!」
……晴信の言葉にも動じないとは。
恐るべし、その留学生。
とりあえず小野田に聞いたとしても、『とにかく美人』という言葉しか言わないので、まったく無意味だってことは分かった。
……特徴を教えてくれる気はないらしい。
そのことについて聞いてみたら、
「駄目だ! 俺だけのものだからな!!」
と言って、一向に聞こうとはしない。
……それに、何も留学生はお前だけのものでもなんでもない。
「バカね、コイツ……」
「言うな。アイツのは元からだ」
刹那の呟きに、俺は精いっぱいの遠慮を加えてそう言葉を付け足した。
「その留学生が気になるね……明日にでもA組に行って見に行こうよ!」
「駄目だ駄目だ! 部外者は立ち入り禁止だ!!」
「お前がそんなのを決める筋合いはねぇっての」
暴走している小野田はともかく、とりあえず明日、A組に行って留学生を見に行こう。
そう誓った、俺達なのであった。
「さて、今日も元気に部活をやるよ!」
「そうだな……とりあえず今日は小野田サンドバックを利用した新技開発でもやればいいんじゃね?」
「なんで俺がサンドバック役になることが決定してるんだよ!!」
「いや、ウザいから」
「ひどくね!?」
まぁとりあえずウザいからという理由で、小野田はサンドバック役に回ってもらうことにしよう。
そんなことを考えつつ、俺は留学生がどんな奴なのかを想像しながら、部活に勤しむのであった。