24,質問
葵からされた質問は、以下の通りだった。
「まずは瞬一(千世)に聞くよ」
「ああ、いつでもいいぜ」
「私の名前は?」
「細川葵だろ?」
「三矢谷瞬一はどこに住んでいる?」
「男子寮だ」
「弟か妹がいる?」
「弟がいるな」
「自分が頻繁に使ってる魔術は?」
「ライトニングだ」
「よく使う武器は?」
「刀」
「す、好きな人とかは……?」
「今はまだいない……ってか、そんなことも質問にするんかい」
前もって教えていた通りの情報が、葵より尋ねられる。
……うん、今の所は順調だな。
「それじゃあ……私とキスをしたことは?」
「なっ……!? あ、あるわけねぇだろ!」
……ああ、それはないな。
キスなんてしたことは、一度もないはずだ……多分だけど。
春香達は何故かほっとしたような表情を浮かべているけど、葵は『ちっ』なんて舌打ちをしている。
……心なしか、背後から黒いオーラが出ているような気もしなくもない。
「……次は千世(瞬一)ちゃんに聞くよ?」
「ええ、いいですわよ?」
今度は千世(俺)に尋ねてくる葵。
……よし、何でも来いや!!
「まずは貴女のお名前は?」
「石塚千世」
「彼の名前は?」
言いながら、葵は晴信を差し出してくる。
……晴信の名前は言うべきなのか?
「宮澤先輩ですわね」
「……こっちの先輩の名前は?」
今度は啓介を差し出してくる。
これは確か……。
「知りませんわ、そんなビーバーみたいな顔をした人なんて」
「ビーバーみたいな顔は余計だ!!」
啓介が怒っているが、この際気にしない。
気にしてたら話が進まなくなってしまう。
「貴女は誰の孫?」
「この学校の校長である石塚源三郎おじい様の孫ですわ」
千世からの情報によると、校長のことは『おじい様』と呼んでいるらしい。
本人はたびたび『ご主人様と呼んではくれぬか?』なんて変態染みたことを言っているが、その度に制裁を加えているとかいないとか……。
「そうね……次の質問は……」
「ねぇちょっと。もう一つだけ瞬一に質問してもいいかな?」
そこで発現をしたのは、織だった。
……しかし、織が一体、何の質問をする気なんだ?
「ん? 別にいいけど?」
さすがは千世。
自然な会話で何とかフォローしてくれたぜ。
「じゃあ質問するよ……ボクと瞬一君だけの、二人だけの場所ってあったよね?」
「あ? ……ああ」
……二人だけの場所だと?
そんなの、織と一緒に作った覚えなど……まさか!?
「……引っかかったね。ボクと瞬一君は、確かに幼馴染の関係だけど、二人だけの秘密の場所なんて、本当はないんだよ?」
「!?」
……瞬一(千世)が驚いたような表情を浮かべる。
そりゃそうだろ……バレたようなものなんだから。
いや、もうバレたのか?
「……なるほどね。違和感の正体がわかったよ……瞬一君の身体の中に、別の人が入ってるね?」
「「「何ぃ!?」」」
激しく驚く、晴信・啓介・刹那の三人。
……どうやらコイツらは最初から真相を探す気などなかったらしく、答えだけを聞いて驚いているのだろう。
まったく、少しは頭を使えよ……刹那はともかく、晴信と啓介はS組のメンバーだろうが。
「……もう隠す必要もねぇだろ、千世。そろそろネタばらしといこうじゃないか」
「……え?」
「千世ちゃんが……男の人みたいな言葉遣いを……って、まさか……」
今度は葵と春香が、驚いたような表情を浮かべる。
……そんなに千世の身体から男言葉が出るのが驚きなのか?
「そうですの。私と瞬一先輩は……」
「心と心だけ、入れ替わっているということだ」
そして俺達は、とうとうネタばらしをしたのだった。