20,とある会話と二人のやりとり
Side???
「……お前に、聞いてほしいことがある」
「……お父様? 一体何の用事が……」
とある日の夜。
私は、お父様に呼び出されて、お父様のお部屋に来ました。
お父様は真剣な表情で、私のことを見つめてきます。
その表情から、私は……これから重大なことを説明されるんだと、そう認識しました。
「実はな……お主にはまた、日本に行ってもらいたい。それも……今回のは少しばかり長めにな」
日本……。
そこは、私にとっては思い入れのある国。
この国の次に……いや、同じくらい大切で。
そして、私にとっては、とっても大切な人が……いる国でもあります。
「けど、何故また突然に……」
「……また、この国が戦乱の危機に追い込まれようとしている。日本に新たなる組織が成立しようとしていると、報告が届いておる」
「……また、戦争ですか?」
「うむ……前回は回避出来たが、今回もしそんなことになったら……だからお前には、もう一度日本に向かってもらう」
「けど、どういう名目で……」
一応同盟を結んでいる国とはいえ、そう多くプライベート目的等の理由付けで日本に何回も向かうというのは、そんなに評判がよくなるとは思えません。
ですから、それなりの理由をつけて来日する必要があると思います。
「……今回、お前には学生となって向こうの国に向かってもらう」
「学生……ですか?」
「うむ。国交を深める為、留学生となって向こうの国の知識等を学びに行く……という名目でおよそ一年間……早めに戦争が終結しそうならば、その時期に合わせて、だ」
「なるほど……ですが、その名目で私を受け入れてくれる学校がありますでしょうか……」
「何を言っておる。こういう時に頼るのが、あの場所であろう」
あの場所……。
確かに、あそこに行けるようになれば、私だって嬉しいですが……。
「そんな簡単に、事が運べるでしょうか?」
「大丈夫だ。きっとうまくいく……さすれば、お前も嬉しいだろ?」
「それは……そうですが」
「とにかく、その予定でいる。だからお前は、日本へ行く準備をしろ。しばらく会えなくなるが、何かしらの連絡手段を持たせることにしよう」
「……分かりました」
不安はいっぱい残りますが。
それでも、今の私は、そんな不安よりも、あの人に会えるかもしれないという気持ちで、心がいっぱいでした。
そして、そんな私のウキウキとした気持ちは……。
「……だるい」
「いや、そんな一言をいきなり言われても」
いやぁ、今日はとにかくだるい。
何と言っていいか分からないくらいに、とりあえずだるい。
つい先日の魔術薬事件の疲れが溜まっているせいでもあるのかもしれないが、出来ればもうあんな事件は起きてほしくないものだ。
「ところで瞬一」
「なんだよ、唐突に」
「さっき技術部の奴らが呼んでたぞ? 何でも、お前に協力してほしいことがあるって言ってたが……」
「全力で拒否したいところだが……」
こういうことに付き合っていると、面倒なことに巻き込まれる可能性が高くなるから、出来れば拒否したいところなんだけどなぁ。
「まぁ、人助けだと思っていけばいいんじゃないか?」
「……まぁ、そうだな」
気はあまりのらないけど。
俺はその技術部の奴らに協力することにした。
けど……今思えば、それこそが俺の間違いだったんだってことに、もっと早く気付くべきだった……。