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Magicians Dream  作者: ransu521
第二部 新学年
42/139

19,投与方法

「瞬一……どこに行ってたの……?」

「分かった。答えるから……そのナイフをどうかしまってくれないか?」

「嫌だ……しまうと、瞬一が逃げるから」

「しまわない方が逃げるとは考えないんだな……」

「……瞬一、ナイフは嫌い?」

「そういう問題じゃねえだろ!!」


ていうか、俺はナイフを好きなわけないだろ!

月夜の中での俺の認識は、一体どうなってるんだよ!?


「男はみんな、強い物に興味があるって……本で調べた」

「随分と勘違いした解釈の仕方だな、おい!」


まったく、月夜に変な知識を植え付けた本って、一体どんな本なんだよ……。

今度その本を一度見てみたいものだ。


「その……早く薬を飲ませた方が……」

「あ、ああ、そうだな……」


春香が遠くの方からそう助言してくる。

まったくもってその通りだ……早く月夜には正常に戻ってもらわないと……。



チクッ。



「いっつ! ……何だ!? 首筋から血が……」

「……瞬一、他の女の子と話ししちゃ、嫌だよ?」

「!?」


こ、怖い……際限なきまでに、怖い。

何というか、軽く人にトラウマを植え付ける程の……ってか。


「首筋から血が出てるってことは……俺、ナイフで首を少し切られ……!?」

「次に他の女の子と会話なんてしたら……どうなるか分かってるよね?」

「は……はい」


や、ヤバい……もはや俺にはどうすることも出来そうにない。

月夜に捕まった今、俺には出来ることなんて……ありそうにない。

「そんなわけで大和……後は頼んだ。俺が月夜の気を引き付けている内に、お前は何かしらの方法で薬を飲ませる方法を……考えといてくれ」


そう言いながら、俺は手に持っていた、薬が入っているビンを、大和に向かって、投げた。















Side大和


「おっと!」


僕は瞬一が投げた何かを、何とかキャッチする。

そこには……何やら錠剤らしきものが二粒程入っていた。

恐らくこれが解術薬なんだろう……仄かに魔術がかけられた形跡も残されているし。

なるほど……この薬を月夜に飲ませればいいのか。

しかし……どう飲ませるか?

月夜本人はあんな状態だしな……どうやって飲ませれば……。


「やっぱり強行手段しかないんじゃね?」

「……だよなぁ」


晴信の言う通りだ。

今の月夜は、それだけ他人を寄せ付けようとはしない。

だから、僕達がどう足掻いても無駄に終わるんだけどな……。

なにか方法はないだろうか……それにしても、本当に平和になったものだ。

前はこんなことに深い思考を使うことはなかったのに。

今ではこんな小さなことにも思考を使うことが出来るなんて……なんて幸せな世界なんだろう、この世界は。

戦いの時だけしか思考を使っていた時とは違う……なんだか温かい思考。

そんな心が、僕の頭の中に染み入っていた。


「……そうだ、いい方法が思いついた」


そんな時に。

僕の頭の中に、とある一つの考えが思い浮かんだのだった。


「何? 何が思い浮かんだの?」


葵が僕にそう尋ねてくる。

……まぁ、これから僕が出す提案は、ちょこっと瞬一には迷惑がかかるかもしれないけど、ま、そのくらいはいいよね……?


「とりあえず僕に任せてよ」


僕は葵達にそう告げると、月夜の方を向いて、


「月夜、ちょっと話を聞いてもらってもいいかな?」

「……何?」


未だにナイフを突きつけている月夜は、僕に向かって、いつも通りの無表情を見せてくれる。

……何だか少しだけ怖いなぁ。

あまりそんなことは思ってないけれども。


「僕が今から渡す薬を、どうか飲んでくれないかな? 飲んでくれたら……今度瞬一を一日自由にしていいから」

「……分かった」

「ちょっと待ってよ! それって私達にはあまりにも不利な条件じゃない!?」


葵が真っ先に気づく。

さすがは葵……瞬一のこととなると、更に頭の回転が早くなる。


「まぁ、あのままベッタリよりはずっとマシなんじゃないかな?」

「そ、そうだけど……」

「け、けど……」

「……」


顔を赤くする、瞬一のことが大好きな女子三人組。

まっ、無理もないか。


「とりあえず、この薬を飲んでよ……」

「……うん」


僕は薬の入ったビンを渡す。

月夜はふたを開けて、その薬を……飲んだ。















こうして、クラスメイト達を巻き込んだ『惚れ薬騒動』は幕を閉じた。

それにしても、なんとも愉快な事件だったと、今では思う……。
















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