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「では、私から……行かせてもらいますわよ!!」
「うわっと!」
ギン!
鈍い衝突音が響く。
鉄と鉄がぶつかりあったのだ。
こんな音が響いて当然だろう。
「くっ……!!」
俺は右から攻撃を加える。
だが、石塚はその攻撃を、いとも簡単に弾き返してくれた。
そして、反撃。
「おっと!」
ギリギリのところでその一突きをかわすと、迷わず俺は反撃に出る。
反撃の反撃なんてなかなか出来ないが……左に身体を捻った力をそのまま利用して、回転する。
「無駄です……わよ!!」
ガキン!
刀が……弾き飛ばされて、何処か遠くの方へ飛んで行ってしまった。
「つ、強い……」
「あの瞬一が……押されているなんて……」
遠くから、葵と晴信のそんなやり取りが聞こえてくる。
他の奴らも唖然とした表情で此方を見てくる。
……俺が押されているのって、そこまで珍しいか?
「これで……終わりですわよ!」
石塚が、この攻撃で終わらせようと考えているらしく……一気に心臓部分を突き刺しにかかる。
……けど、甘いな。
「勝負がそう簡単についちまったら……つまらないだろ?」
「もうじき決着がつきます……わよ?」
俺の言葉に耳を貸すことなく、石塚は最後の攻撃をしようとした。
……だが、出来なかった。
何故なら。
「……くっ!」
真上より落ちてくる、一本の刀。
それは紛れもなく……俺の刀であった。
先程飛ばされた時に、あらかじめ転移魔術をかけておいたのだ。
石塚は俺に対する攻撃を止め、すぐさまその刀対処に移る。
その辺りの動きは……流石としか言い様がなかった。
「転移魔術か……やりますわね」
そんなことを呟いているが、俺としては戦うので必死だ。
……この攻撃は避けられるとは思っていたが、こうも簡単に避けられてしまうのもちょっとな……。
「ですが……その程度の魔術では、私を倒すことは出来ませんわよ!!」
「……どんだけ余裕なんだよ、お前は」
まったく、石塚はこんなにも身体を動かしたというのに、息を荒くしていないなんて……。
「それは瞬一君も同じだよ……」
……あれ?
織の言う通り、俺もそんなに息が荒くなってない?
おかしいなぁ……結構身体動かしたような気もしなくもないんだけどなぁ。
「……貴方、気に入りましたわ。ようやっと私と渡り合えるような、そんな人とめぐり合うことが出来ましたのね!!」
「……あの、勝手に話を盛り上げないでくれません?」
勝負の最中だというのに、瞳を輝かせる石塚。
……忙しい奴だな、本当に。
「ただの変態だと思っていましたが、そうではなかったのですね?」
「……変態とは、心外な」
本当の変態は、小野田や晴信のことをさすのだろう。
……俺はそこまで変態じゃあない。
「さて、そろそろ決着をつけましょう……私は最後まで剣で勝負しますわよ?」
「……しゃあねえ。俺も転移魔術しか使わねえよ。コレ以上はフェアプレイに反するからな」
「その心遣い……やはり貴方は本物ですのね?」
「何についての本物かは知らないけどよ……褒められていることに変わりねぇんだろ?」
だとしたら、俺は素直に喜ぶべきだろう。
……そして同時に、この戦いに決着をつける必要もあるわけだ。
「行くぞ、石塚……」
「ええ、行きますわよ……!!」
互いの得物を構え、そして……。
「「ハァッ!!」」
ガキン!!
そして俺と石塚の決着は、ついた。