10,力と力のぶつかり合い
……ただいま、俺はものすごく面倒なことに巻き込まれています、はい。
目の前には、一人の少女が立っている。
その少女は……ひどく笑顔を見せていた。
得物であるらしい剣の刃先を俺に見せつけながら、不敵な笑みを浮かべている。
……何だろう、この絶対的な自信は。
コイツのこの自信は、一体どこにあると言うのだろうか。
「瞬一……正直言って、この戦い、負けても構わないぞ?」
「……ありがとよ、晴信」
まさか、晴信に優しくされる日が来ようとは。
……俺は今日というこの日を絶対に忘れないだろう。
ある意味で、印象深い日でもあるからな。
「正直言って……ソイツ、強いぞ」
「さっきのお前との対決を見てりゃあ分かるって。いつも弱いお前がかなり弱く見えたからな」
「余計なお世話だ!!」
小野田にそう言い放つと、俺は石塚と向かい合わせの形となる。
……相手は剣を持っているのに、こちらは手ぶら。
それじゃああまりにもわりに合わないので、
「……ん?」
俺は右手で刀を握ると、それを両手で握り直した。
俺の武器は……この刀だからな。
幾度もの死線を乗り越えてきた刀だから……今回も期待してるぞ。
「へぇ……貴方もそういう武器をご希望ですの?」
「まぁ、今までも刀ばっかり使ってたからな。たまに銃とかも使うが……相手が剣なのに銃を使うのは、あまりフェアじゃねえだろ?」
「へぇ……貴方、なかなかに心遣いが効きますのね?」
何やら嬉しそうに、そんなことを言ってくる。
……まぁ、さっきの小野田に至っては何でもありだったからな。
「けど、刀だけで勝負する気はさらさらねぇからな。必要になったら……魔術だって使用するぞ?」
「分かってますわよ。私もその気でいますから」
「そうかい……なら、遠慮はいらないってことでいいんだな?」
俺は構えをとりながら、石塚にそう尋ねる。
すると、石塚は、
「……ええ、いいですわよ。ただ、貴方が全力で来たところで……私には勝てないと思いますが」
「ほぅ……言ってくれるじゃねえか。後で泣いても知らねぇからな?」
「その言葉……そっくりそのまま貴方にお返しいたしますわ?」
……売り言葉に買い言葉ってな感じで、俺と石塚は会話を繰り返す。
……コイツ、今まで戦ってきた中でも強敵に部類する奴だな。
さすがは校長の孫娘と言うべきだろうか……小野田の戦いを見てきて分かったことだが、単純な剣術だけなら、北条といい勝負になるだろう。
そして、魔術込みなんて言ったら……大和にも匹敵するかもしれない程の実力の持ち主だ。
……後で大和の奴に紹介してみようかねぇ。
「な、何だか……眼がマジだよ?」
「す、少し怖いです……」
遠くの方では、織と春香がそんな会話を繰り広げていた。
……別に怖がる程の眼じゃねえだろうに。
真剣になってるだけなんだからよ。
「……それじゃあ、勝負内容を確認するよ?」
これは一応部活なので、審判として葵がつくことになっていた。
そして、葵がその内容を確認する。
「勝負は制限時間なし・攻撃制限なしの一本勝負。相手を降参させた時点で、その人の勝ちとする……それでいいよね?」
「もち」
「よろしいですわよ。ですから、さっさとお始めなさい」
さすがは石塚……部長であっても容赦はなしか。
「……それじゃあ、勝負」
スッと、葵が右手を挙げる。
……いよいよ始まってしまう。
俺と、コイツの戦いが……。
「はじめ!!」
そして、俺と石塚は、同時に地面を蹴った。