9,実力は如何に……?
「じゃあ早速、千世ちゃんの実力がどれほどの物なのか……試してみようかな?」
葵が早速、そんな提案を出してきた。
まぁ確かに、いきなり入部扱いにするのもなんだか癪だしな。
葵の判断は決して間違いなんてことはない。
「それじゃあ……今回は小野田君で実験してみようかな?」
「よっしゃ! ついに俺の出番が回ってきたぜ!!」
「……死亡フラグ立ったな、今ので」
「……ああ」
「そこ! うるさいぞ!!」
晴信の言う通りだというのに……まったくコイツは。
てか、コイツは校長の孫娘なんだぞ?
要は……力もそれなりにあるというわけだろ?
いいのか? そんなやつの相手を小野田にさせて。
「大丈夫だよ。小野田君……晴信よりも治癒力高いから」
「そういう問題じゃねえだろ……てか、魔術服なしでやらせる気か?」
「だって、本人がそんなもの必要ないって……」
アイツ、無傷で帰って来れると信じてるのか?
……アホだ、生粋のアホだ。
「さて、それじゃあ俺の実力を見せてやるよ!!」
「……貴方、魔術服なしで私と戦おうなんて……無謀にも程がありますわよ?」
「お前のその態度が気にくわねぇんだよ……上級生だろうと見下すようなその態度がよ!!」
なるほど。
だからアイツが自ら名乗り出たというわけか。
自分で名乗り出て、石塚のことを倒して。
そしてどっちが上かを思い知らせてやろうと、そういうことか……アホだな、コイツ。
「プライドの為に、自分の命を差し出すなんて……やるな、お前」
「佐々木、お前は黙ってろ。これは男と女の真剣勝負なんだ」
「……言ってて恥ずかしくないか?」
啓介の言うとおりだ。
その言葉、格好いいようで、実はとんでもなく理不尽だぞ。
しかもそれで負けたら……かなり格好悪いぞ?
「大丈夫だ……なぜなら、俺は負けないからな」
「……何の根拠があって、そんなことが言えるんだよ」
……とりあえず、俺は小野田の行く末を見守ることにした。
「……勝者、石塚千世」
「おいテメェ……俺の活躍を、改行だけで済ますんじゃ、ねぇよ……ガクッ」
……やっぱり、小野田の敗北に終わった。
恥ずかしいにも程がある……てか、弱いのなら全力で拒否すればいいのによ……。
「やっぱり負けちゃったね」
「葵……お前、さりげなくSだな」
負けるって分かってるのなら、止めてやれよ。
小野田、若干焦げてるぞ。
「まぁ大丈夫だろ。アイツなら1分くらいで治るだろうし」
もはやそれ、人間の治癒力の限界を超えてるだろ。
「やっぱりコイツじゃあ物足りないですわね」
そりゃそうだろ……だって、わずか1分足らずで試合が終わってしまったのだから。
「というわけで、誰かもっと強い人を希望しますわ」
「と、言われてもな……てなわけで、晴信、行って来い」
「おう、任せと……って俺かよ!?」
何驚いてるんだよ、晴信。
ネタ要員第一号がいなくなったのだから、お前が行って当たり前だろ?
「……だ、大丈夫ですよ宮澤君。魔術服さえ着てればなんとかなりますって」
「け、けどよ……だったら一之瀬、お前が行くか?」
「わ、私はちょっと……」
だよなぁ。
他の奴らも見てみたが、やはり遠慮しているようだ。
……正直、俺も面倒なことに巻き込まれるのは勘弁したい。
「しょうがないですわね……それじゃあ私が指名致しますわ」
……まずい。
指名制になると、みんなに平等に可能性が出てくる。
何とかして俺だけは避けないとな……どうする、どうする俺!?
「……じゃあ、貴方にしますわ」
「……え、俺?」
……石塚の指名の結果。
何と、見事に。
「……頑張ってね、瞬一」
「お、応援してますよ、瞬一君」
「瞬一君なら大丈夫だって! ……多分」
「け、怪我しないよう頑張ってください、瞬一先輩」
「せいぜい無茶しないようにね、瞬一先輩」
「俺の分まで頑張れよ!」
「……大丈夫だ、骨は拾ってやる」
上から順番に、葵・春香・織・優奈・刹那・晴信・啓介の順番だ。
……てか、最後の啓介の言葉、不吉な予感をよぎらせるのだが。