8,新入部員
「なぁ瞬一、今日問題の孫娘が来るんだろ?」
「そうみたいだな……だよな、葵?」
「うん、そうだね」
放課後。
いつも通りに授業を受けた俺達は、ただいま部室へ直行中である。
部室というか……簡単に言ってしまえば闘技場に向かっていることになるのだが。
「はぁ……久しぶりの部活だよなぁ、本当」
「そうですね……しばらくの間は身体を動かしていませんでしたからね」
「春休み恐るべしだよ……(少し太っちゃったし)」
「ん? 何か言ったか?」
「い、いや! 何も言ってないよ!!」
「……?」
何やら織がボソボソと呟いていたのが聞こえたが、何を言っていたかまでは聞こえなかった。
……多分聞こえてなくて正解な言葉だったのだろう。
織がホッとしたような表情を浮かべているところから推測して。
「ほぅ……少しは成長したというわけか」
「……いつの間にか復活してたのか、晴信」
ある意味コイツの生命力には驚かされまくっている。
……何なんだよ、コイツ。
いくら攻撃しても死なないんじゃねぇのか?
「さすがにそれはねぇよ……」
「心を読むな、心を」
「紳士のたしなみ、だぜ?」
「最悪なたしなみだな……」
とりあえず、人の心を読むことのどこが紳士なのだろうか?
それでもし女性の心なんか覗いてみたら……ただの変態ではないだろうか?
「そんなことしている内に到着したみたいだよ」
「……ああ、そうみたいだな」
バカなことをやっている内に、いつの間にか到着していた。
まぁ……分かってたけども。
「さてさて、部室にはもう来ているのかなっと」
俺達は闘技場内にある部室のドアを開ける。
……あ、闘技場の中には俺達魔術格闘部の部室もきちんと用意されているのだ。
他の部活の部室もあるみたいだが……中に入ったことがないので他にどの部活が使用しているのかまでは把握出来ていない。
ただ、毎日活動出来ていないのは、これが第一の要因と言えよう。
「ちわ~す」
俺はそんな挨拶の言葉を述べながら、中に入る。
すると、
「こんにちはです、瞬一先輩」
「なにが、『ちわ~す』よ。結構遅刻している癖に」
「まぁまぁ、色々あんだよ、高校三年生にはよ」
部室の中には、すでに三人の少女がいた。
一人は、青色の髪をポニーテールにしている少女。
一人は、青色のストレートヘアーで、若干釣り目がちな少女。
あ、この二人は上から順番に植野優奈と刹那。
二人は双子なのだ。
そして、最後の一人が……。
「……あれ、お前、昼休みに図書館で会ったよな?」
「あの時の……変態!?」
「だから変態じゃねぇよ」
どこかで見たことのあるような、金髪のロングヘアー。
……図書館で俺が『流れ星の岩男』を取ってやった少女にクリソツだった。
……というか、本人だった。
「お前がこの部活に来ているということは……まさか」
ある一つの可能性が、俺の脳裏に思い浮かんでくる。
……いやいや、まさかねぇ。
「あら? だったら貴方はこの部活の関係者でしたのね」
「まぁ……そういうことになるが」
「瞬一……この子と知り合い?」
葵が俺に尋ねてくる。
俺は正直に答えた。
「まぁな。図書館で困ってた所を、ちょこっと手助けしただけの間柄だがな」
「……お前、とんでもない奴と知り合いになったな」
「へ?」
何の話だ?
別に普通に本を取ってやっただけじゃないか……何がそんなにも大変なことなんだ?
「その子は、この学校の校長先生の……孫娘なんです」
「……………………………………………………………………………………………………………へ?」
マジでが、春香。
それ……マジの話?
「はじめまして、魔術格闘部の皆さま。私は、この学校の校長、石塚源三郎の孫娘……石塚千世と申しますわ。以降、お見知りおきを」
「……マジで?」
ああ……何だか更なる波乱の予感。