7,図書館での出会い
さて、ここで話がかなりずれるが……ちょっとここでこの学校の設備について説明しておこう。
ご存じの通り、この学校はとにかく広い。
中高一貫校というのが幸か不幸か、校舎のみではなく、他の設備も広いのだ。
例えば……体育館の代わりの闘技場。
これはとにかく広い……というか、体育設備に観客席とかつけんな。
続いて音楽室。
これについては特別語れることはないが……噂によれば、小さなライブハウス大の物から、少し大きめなステージまで様々な場所が用意されているとのこと。
……この学校は、はたして何を目指しているというのだろうか。
というか、これだけ設備を充実とさせているにも関わらず、学費はそれなりに安いのだから……まぁなんとも恵まれた環境と言うべきだろうか。
話がそれたな……それで、俺が今一体何を言いたいのかと言うと、
「この図書館……広すぎだろ」
昼休み。
特にやることもなかった俺は、なんとなくで図書館にやってきたわけなのだが……その図書館と言うのが、何とも広い物で仕方がないのだ。
高校二年生までは図書館に行ったことがなかったから、この広さに慣れていない。
……誰が好き好んでこんな広い図書館で本なんか読むかっての。
まぁ、広いのを知ったのは今日初めてなのだが。
「これじゃあ暇つぶし出来る程落ち着けないな……」
感じでいえば、市が運営している図書館に来たような感じだ……しかも大きめの。
まったく、ここの校長は金の使い道を間違えているのではないだろうか……。
「まぁ、来たからには何か本でも読んでみるか」
晴信達と一緒にいるのもよかったのだが……その晴信は今、保健室に運ばれている。
どうやら朝のライトニングが相当効いているみたいだ。
葵は葵で部長だから呼び出されているし、大和は北条がベッタリ状態だ。
大地は勝手にどこかへ消えるし、織は女友達と一緒に何処かへ行った(と言うより、連れ去られた?)。
春香は……何か兄に呼び出されている。
……てか、兄って卒業したばかりだよな?
家族のことで何かあったのだろうか……まぁ、むやみに人のプライバシーに付け入るのも何だか俺としては良心が痛む。
そんなわけで、俺は今一人だった。
……啓介は小野田と喧嘩始めるから、置いてきた。
どうやら未だに小山先輩のことを取り合っているらしい。
……アイツらもバカだねぇ。
「俺が言えた義理でもないけどな……うん?」
呟きながら、小説の入っている棚に差し掛かったその時だった。
「……女の子か?」
何か、背伸びして必死に一番上の本を取ろうとしている女の子がいる。
えっと……金髪でロングヘアー。
後ろから見ただけじゃどんな顔をしているのかは分からないが……制服の色的に高校一年生だろう。
とりあえず困っているようなので、俺は声をかけてみる。
「……とってやろうか?」
「!?」
バッ! と、その女の子はこちらを振り向いた。
……何故だか顔を赤くして。
釣り眼がさらに吊り上っていて……もしかして、怒ってる?
「い、いいですわよ別に! 私の力だけでとれるんですから!!」
「ほぅ……言ったな?」
……何だろう、この子は。
俺の心を……無性にくすぶる。
何と言うか、『S』の心を。
「それじゃあ取れなかったら……お前のことを、好きにしてもいいんだな?」
「え、ええ!? す、好きにするって……ま、まさか、貴方……変態!?」
「男は皆変態なんだよ……これ、友人の受け売りだが」
「ちょっ……近寄らないでくださいます!?」
近寄ってないんだが。
「まぁ冗談はさておき、この本だよな? ……よっと」
そう呟きながら、俺は『流れ星の岩男』という本を取る。
……どこかのゲームの名前に似ているような気もするが、気にしないでおこう。
「ほらよ、この本だろ?」
「……あ、ありがとう。い、言っておきますが、お礼は一回しか言いませんからね!」
……なるほど、この少女、ツンデレお嬢様か。
「んじゃ、俺はこの辺で」
「あっ……」
何か言いたげな表情をしていたが、俺はその時は気付くことなく立ち去ってしまった。
……後で分かったことなのだが、この少女……俺達に関わることとなる少女だったのだ。