3,女神様
モテラスさんに連れられたまま、私はとある場所までやってきた。
……そこは、何かの神殿みたいな場所。
まるでRPGの世界にでも紛れ込んだかのような……豪華で、しかし派手過ぎない神殿。
周りには女神をモチーフとした銅像等が建てられてあって、入口の前には、やはり背中に羽根を生やした少女が二人、門番の役目を果たしていた。
「……モテラスです。細川葵さんを連れてきたので……」
「……新たな聖光者の候補生ですか?」
「……ええ、そんなところです」
「だいてん、し……?」
また聞きなれない単語が飛んでくる。
聖光者って、一体何……?
「さ、行きましょう」
「あ、は、はい……」
門番をしていた少女二人は、私の姿を確認すると、何やら不思議そうな表情を浮かべながら道を空ける。
……なんだか、品定めをされているような気がして、あまり気分がよくない。
「では……いよいよ女神様と御面会する時です」
「……」
緊張してきた。
この世界を統率している神であり……私に光の器の力を授けてくださったお方が、はたしてどれほどの人なのだろうか……。
よほど貫禄がある人なのかもしれない。
『女神』と称されているのだから……女性であることに間違いはないだろう。
神殿の中に入ってからは、一直線の道であった。
中はあまり装飾は施されておらず……外よりは地味な風貌をしていた。
それでも……神が居座るだけあって、私の身体に伝わってくるプレッシャーは……外にいた時よりも全然違うものであった。
「つきましたよ、葵さん」
「あ、はい」
モテラスさんがその場に立ち止まる。
ということは……女神様がいる場所まで到達したということになるだろう。
「……うわぁ」
そこはとても広い空間。
まるで教会を思わせるような……そんな感じ。
道を挟んで左右に均等の数だけ座席が用意してあり、目の前に十字架が立てかけられている代わりに……大きな椅子が一つ、用意してあった。
その座席は……空白だった。
「あれ……女神様は留守ですか?」
私は思わずモテラスさんに尋ねる。
するとモテラスさんは、
「いえ、そういうわけではありません」
と言いながら、コツコツと前に歩き出す。
私も遅れないように、その後ろをついていく。
やがて、大きな椅子の目の前くらいまで到達した時、
「……女神様、細川葵を、無事天上界までお届けいたしました」
―――うむ、ご苦労でした。モテラス、ソナタはもう下がって構いません……引き続き、島の方の治安を守るようお願い致します。
「!?」
どこかから声がした。
まったく姿は見えないのに……声だけは聞こえる。
いや、聞こえるじゃない……響いてくるという方が正しい。
耳から脳に伝わるという回路を無視して……直接頭に訴えかけてくる。
そんな感じの……声だった。
「はっ。分かりました」
モテラスさんはそのままその場を去って行ってしまった。
……私はどうすればいいのだろう。
とりあえず、女神様が到着するのを待っていた方がいいのだろうか……?
『ふむ。そのままだとソナタが困ってしまいますね……それでは、目の前に姿を現すことにしましょう』
「あ、はい。その方が、私としても嬉しいです……」
姿が見えないまま話だけするのは、何だか私としても戸惑いを隠せない。
だから……女神様のその提案を、私は素直に受け取った。
すると……。
「うわっ!」
カッ! と椅子が光り出す。
思わず私は、目を閉じてしまう。
……すぐにその光は収まり、私はそっと目を開けた。
「……あ」
そこにいたのは……背中に羽根を生やし、金色で長い髪の毛の、瞳の色は吸い込まれるようなスカイブルーで、肌の色は白い……絶世の美女だった。