2,新しいクラス
またか、という気持ちと同時に、よかったという安堵が混ざったような、そんな感じであった。
もしも下のクラスに落ちていたらどうしよう……なんて考えていたからな。
危ない危ない……頑張ってよかったぜ。
「にしても……教室の位置まで変わらないとは」
教室の位置は、前と変わらず去年度までと同じ教室であった。
この学校では、各学年毎に教室の場所が決められていて、その学年は三年間同じ場所で授業を受けるのだそうだ。
……画期的なのか、それともただの面倒臭がりなのかは知らないが、とにかくそう言うことだ。
「なんか新鮮味が湧かないな……」
「そうか? 新しい学年になったってだけで、結構新鮮味があるんだけどな……」
「どのみちクラスメイトもあまり変わらないだろうに……なんなら、クラス分け試験とかする必要もないだろ」
「いや、やる必要はある!」
……なんか、突然叫び始めたぞ。
これからコイツは一体どんなことを言ってくるというのだろうか?
「新たな出会いというのはとても大切なことであり、男子にとっても女子にとってもかけがえのない大事なものなんだぜ! 男子は気になるあの娘がいるかどうか気になりだし、女子は憧れのあの人が一緒のクラスにいるかを気になりだす。そしてその人と同じクラスになれた時……彼らのテンションは一気にMAXとなる! もはやこれは世界における共通認識であり、4月でクラス替えというこの時期においてはもっとも必要な刺激にもなる! そうして運命の人を見つけた奴らは、その人にその想いを伝える……すなわち告白をするんだ! するとどうだろう……なんとその人も告白した相手のことが好きだったんだ! つまりは相思相愛、お似合いカップル! これは青春においては必要不可欠なことであって、これがない人生なんてもはや考えられない! 告白するかまではその人個人の事情となるが、とにかく最終的な結論を言えば、クラス分け試験は必要というわけだ」
「けどよ……面倒じゃね?」
「貴様! 俺の熱弁をほんの一行の返事で済ましやがって! 俺の苦労を返せ!!」
なら、無駄に消費した俺の時間を返してくれ。
お前の話に付き合ってやったんだからよ……結局つまらないものだったけどよ。
「ほら、教室に入るぞ。いろいろと面倒だからよ」
「分かってるよ! さぁ今回のクラスはどんな美少女達が待っているのだろうか? 御対面~!!」
ガラッ!
勢いよく教室の扉を開いた晴信。
……なんというか、何時も以上にテンションが高いな、コイツ。
俺は朝から眠いというのに……。
つい数ヶ月前まで、俺達はあり得そうであり得ないような毎日を過ごしていた。
そのおかげで、トラブルに対する俺の心の持ちようが随分と変わったような気がするが……まぁ今は関係ないのでそれは置いておこう。
さて、問題はこの教室の中だ。
晴信の奴が異様なテンションで扉を開いた為に、なかなかに視線が身体に突き刺さる。
……なんというか、俺まで巻き込まないでくれ。
「あ……瞬一君!」
「その声は……織か……って、グハァ!」
今のは、俺が織に激突された音。
この少女の名前は、神山織。
小さい時から交流があったのだが、ちょっとした出来事があってしばらくの間海外にいたのだが、去年日本に戻ってきた……所謂帰国子女。
「こら織ちゃん! 瞬一を独り占めするのはよくないよ!」
「悔しかったら葵ちゃんも瞬一に抱きつきなよ~」
「う~……」
軽く唸っているのが、俺の友人その3こと細川葵。
実はちょっとした事件に巻き込まれて、行方不明になっていたのだが……雪が降っていたある日に突然帰ってきた。
その時は喜んだなぁ。
「相変わらずだね……瞬一達は」
「見ていて飽きない奴らだ……」
「あ、あの……おはようございます」
「おはよう、三人共」
続いて俺達に話しかけてきたのは、上から順番に、大和翔・森谷大地・一之瀬春香だ。
三人とも、俺の友人だ。
「お~い、席につけ~」
ちょうどこのタイミングで、先生が教室に入ってきた。
「また私が大和君に挨拶してないのに……(ρ°∩°)」
「俺もまだみんなに挨拶してないぜ……」
あ、顔文字使ってる奴と、なんか嘆いている奴は、それぞれ北条真理亜に佐々木啓介だ。
……てか、これってほとんどオールスターじゃん。




