22,決着
Side葵
「あそこに……敵の本拠地が!」
上空から確認できるように、山頂には小屋らしきものが建てられていた。
……多分あの小屋自体は既に建てられていた物であるのだろう。
だから、ここから攻撃して潰すわけにもいかない。
「それに、あそこには私達の仲間も……」
地上では、他の人達も戦っている。
だから、私一人だけでこんな所にいるわけにもいかない。
……あそこに降りればいいのかな?
「敵襲だ!!」
その時、私の存在に気付いた敵が、途端にそう叫んだ。
けれど、私には関係ない。
何故なら……。
「撃ち落とせ!」
「無駄だよ!」
相手からの攻撃を、私は見えない壁を作って防ぐ。
……大丈夫、行ける。
「くそっ! ……覚醒した光の器の力は厄介だな!!」
「他の奴を確実に仕留めるんだ! そうすれば相手の数を確実に減らせるぞ!!」
「させない!」
他の人達を消させてたまるか!
そう考えた私は……一気に相手の陣地まで攻め入る。
地面に足をつけず、低空飛行のまま、手に剣を造りだし……そして斬る。
ただし、殺しはしない。
刀の峰の部分で、相手を確実に気絶させていく。
「ぐぇ!」
「がはっ!」
「うがっ!」
あまり聞きたくない悲鳴が聞こえるけど……仕方ない。
これもこの戦いを一刻も早く終わらせる為だ。
それに、私は人を……殺めたくはない。
だから人は殺さない。
「……うまくいくかは分からないけど、とにかく今は相手を倒すことを考えよう」
倒されることは考えない。
倒すことしか考えない。
一撃必中……いくしかない。
「うわぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」
迫り来る敵を次々と倒していく。
斬る……しかし、殺さない。
そんな作業は、なかなかに難しいけれど……今の私にとっては必要なこと。
この力は、使いすぎると確実に相手を殺してしまう。
しかも……敵味方関係なしに、だ。
「この先は通さない!」
扉の前に立ちふさがる、一人の男の人。
……邪魔だ。
「そこをどいて!」
「舐めるなよ!」
ギン!
重くのしかかる、男の人の体重。
それは剣からでも伝わってくる……明らかなる重み。
戦闘慣れは……いくらかしている私でも、これは経験の差があるのだなと感じさせられる。
けれど……今の私の前では、そんな経験などどうでもいい!!
「うぐっ!」
力で圧倒する。
光の器としての力の前では、経験などプラスマイナス0になる。
経験の差なんて感じさせない……!!
「ハァッ!」
「くっ!」
男の人の表情が、苦くなる。
私の剣の峰の部分は、男の人の腹の部分にうまく埋め込まれる。
……苦しんで、その場に蹲る。
そのタイミングを……私は見逃さなかった。
「あ、くそ!」
「今だ! 総員突撃!!」
私が突入したのを受けて、他の人達も合わせて突入した。
そして……中にいる大将らしき男の人を取り囲む。
「……まさかこんなにも早くに来るとはな」
「……ゲームセットだよ。もうこれで、逃げ道なんてない」
私は、大将にそう告げる。
すると、その人は……。
「……そのようだな。さすがに10人もの光の器に取り囲まれたら、抵抗しようがない」
「……じゃあ」
「そうだな……仕方がない。ここは我々の敗北ということで……手を引こうじゃないか」
……こうして、長かった一日が、幕を閉じた。