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Magicians Dream  作者: ransu521
第一部 光の器と闇の軍勢
21/139

21,ラスト・ワルツ

Side麻美


「ハァハァ……」

「ゼィゼィ……」


お互いに満身創痍の状態だった。

多分、これ以上ないほどの激しい戦いだったと思う。

それだけに……もう身体が言うことを聞いてくれそうにない。


「ゼィゼィ……なかなかやるじゃねえか、寺内」

「ハァハァ……じ、迅君こそ……」


顔では余裕そうな表情を見せているけれど、その実もう身体の方は限界なんだってことが互いに理解出来た。

私なんて……立ってるだけでもかなり体力を削られている。

迅君と違って、私は戦い慣れしてなかったというのもあるけれど……これはいくらなんでも体力なさすぎだろう。


「まったくよぅ、こんな時に光の器(てんし)として覚醒させられるんだもんな……マジで死ぬかと思ったぜ。もっとも、これは殺し合いなんかじゃないけどな」

「そうですね……私達がやっているのは、もはや殺し合いじゃありません」


例えるなら……そう、前にも述べた通り、これは踊りなのだ。

男と女がいてようやっと始められる……言わばワルツ。

神殿の中だから、月の光のスポットライトが当たるわけでもないけれど、よくよく考えてみれば踊りは室内でやることが多いことに気づく。

故に、ここは絶好の場所とも言えるのだろう。


「さてよ……楽しかったダンスパーティーもいよいよクライマックスだ。楽しいことには必ず終わりがある。それと同じように……今宵にも、終わりが来る時がある」

「それが……この瞬間ということですね?」

「その通りだ……次の一撃で決める」


スッと、迅君は腰を低くして構えをとる。

その手には……鎌ではなく剣が握られていた。

それを受けて、私も光の剣を造り、構えをとる。


「同じ武器にしてくれて助かる……別の武器を選ばされた場合にはどうしようかと思ったからな」

「その時はその時ですよ……もっとも、私達が別の武器を選ぶなんてことはあり得ませんが」


私達は……絶対に同じ武器を選んでいたはずだ。

だって、私達は……幼い時をずっと過ごしてきた仲なのだから。

たった数日ではあったけれど……共に過ごしてきた、そんな仲なんだから。


「いきますよ……」

「……行くぞ」


静寂の時間が訪れる。

……何がきっかけで、私達はスタートを切るのだろうか。

分からない……静寂の時間が嫌に長く感じる。

けれど、どこかから聞こえてきた、ポチャン、という水が落ちる音が鳴ったのは、ほんの5秒後のことであった。


「「ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」


それがきっかけとなり、私達は同時に動いた。

私は、確実に迅君の身体を捉える為に、一刻も早く到達するように、剣を握りしめ、前へ突っ込んで行く。

それは相手も同様であり、その瞳は……何だか輝いているようにも見えた。


「これで終わりだ……寺内!!」


右から左へ繰り出される、迅君の攻撃。

それを受け流し、その反動を利用して……。


「これで……終わりです!!」


私は、攻撃を受け流した反動で左側に弾かれた剣を、そのまま……振り下ろした。










ザン!










「……」

「……俺の、敗北だ」


迅君は、短くそう告げる。

この戦いは……私が勝利した。

そのことを認めるかのように……笑って、そう言った。

もちろん私は、迅君のことを斬ったりしていない。

その刃先を、迅君の頭上まで持ってきて、そこで止めたのだ。

何故ここで止めたのかと聞かれれば、私はこう答えるだろう。

『これは……殺し合いではなかった』と。


「情けないぜ……覚醒していたとは言え、まさか寺内に負けるなんてよ」


剣を消し、迅君はそう言ってくる。

私も、持っていた剣を消し、迅君と向かい合う。


「……行け。この山の頂上に、俺達の親玉がいる。ソイツを倒せば……お前達の勝利だ」

「……いえ、私はここに残ります」

「!? ……いや、お前何言ってるんだ?」


迅君が驚いたような、呆れたような、そんな表情を見せる。

まぁ……それも無理はないのかもしれないけど、私はここに残りたいのだ。

何故なら、


「……せっかくの再会なんですから。久しぶりに迅君とお話してみたいなって思ったんです」

「……そうかよ。なら、勝手にするといい」


明後日の方向を向きながら、迅君がそう答える。

拒絶はされない……それが一番、嬉しかった。

やっぱり、私の帰る場所は……迅君のそばだったんだなって、改めて思い知らされることとなった。

今はこの天上界が、私の居場所だけれども……やっぱり迅君のそばも心地よい。

そう……認識させられたのだった。
















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