2,この世界での目的
「……う」
次に私が目を覚ました所は、本当に見知らぬ場所だった。
……というより、見知らぬ世界だった。
けど……私はその世界の風景を見て……唖然とした。
「うわぁ……」
木々がたくさん生い茂っていて、その中に科学的な建物がいくつか作られている。
電気などはもちろん通っているけど……電気なんかいらないのではないかと思われる程明るい世界。
街には川などが通っているが……その川の水は透き通っていて、飲めそうな程だ。
何より気付いたのは……周りにいる人達が皆、背中から光の器の象徴である羽根を生やしているところだ。
「凄い……ここが、天上界……」
「ええ、ここが天上界……貴女がこれからしばらくの間生活していくことなる世界です」
「え?」
突然声がする。
だけど、この声は聞き覚えのある声だ。
多分……モテラスさんの声だと思う。
「その声は……モテラスさんですか?」
「はい、そうです」
背後から声がしたので、私はその方向を振り向く。
……するとそこには、青年が一人立っていた。
「貴方が……モテラスさん」
「ええ、そうですけど……僕の顔に何かついてますか?」
「……目と鼻とまつ毛と眉毛と口がついてます」
「まだひげが足りませんよ? ……もっとも、あまり生やしてはいませんけど」
その青年は、何と言うか……一言で表現してしまえば、優しそうな青年、だった。
何処までもお人好しな人物を連想させるような……そんなオーラを醸し出していた。
そしてやはり、背中には羽根が生えていたのだ。
「ああ、この羽根ですか? ……大丈夫ですよ。僕は別に死んでいるわけではありませんので。この羽根は、この世界に来ている光の器全員に生えるものなんですよ」
「へぇ~……ということは、私の背中にも?」
「ええ、生えていますよ。立派な羽根が」
言われて、私は首を後ろに回して……そして、背中についている羽根を確認した。
夢じゃないんだ。
この世界に来ていること……決して夢なんかじゃないんだ。
「……これから、試練が始まるんですね」
「はい。貴女の今後の未来をかけた……試練というよりも、力を使いこなせるようにする修行と表現した方が正しいのかもしれませんね」
「修行……ですか?」
「これから貴女にやってもらうことは二つです」
右手でピースのようなものを作り、モテラスさんは私に次の言葉を告げた。
「一つは、これから僕と一緒に女神様にお会いして頂きます」
「アルカ……様?」
「アルカ様はこの世界を創造なされた人物……光の器の力を授かるにふさわしい人物を選ぶお方でもあるのです」
……私は、そのアルカ様からこの力を授かったのか。
……どんな人なんだろう、会ってみたいなぁ。
「そして次に……アルカ様から試練を授かってもらいます」
「試練を……授かる」
つまり、アルカ様に会って自分のことを伝え、そして試練をもらうというのが今日の流れ。
それにしても一体どんな試練が私を待ち受けているというのだろう。
簡単な試練……なわけないよね。
それなら、こんな世界まで連れてこられる意味がないし。
「決して簡単な試練ではありません。中には命を落としてしまうようなことがあるかもしれません……くれぐれも注意してくださいよ。貴女にとってこの世界での死は、現実世界に戻れないことを意味していますので」
「……分かりました」
不用意に命を落とす真似だけは避けなくてはならない。
モテラスさんの言葉から、そのことを察知することが出来た。
「それでは……行きましょう」
「……はい」
私は、モテラスさんの後をついて行き、アルカ様の所へ向かった。