19,覚醒
カァッ!
突如光りだす、私の身体。
「な、突然、光出して……」
「……聖なる光よ。彼の者の闇を消し去れ!!」
右手を突き出し、呪文を詠唱する。
すると、目の前に魔法陣が出現して、そして……。
「ぐはっ! ……油断した。まさかこの期に及んで力を発揮させるなんてな……」
「……で、出来た」
今まで出来なかったのに。
今この時になって……ついに完成した。
これが、光の魔術……光の器の力。
「……迅君、ここからは、私も反撃します」
「……いいじゃねえか。こんなタイミングで本領発揮ってところかよ。まったく、遅すぎる本領発揮だぜ……」
楽しそうな笑みを浮かべながら、迅君がそう言う。
そして、
「その意気だ。その意気だぜ寺内! さぁ今宵は長い。この漆黒の舞台の上で……踊ろうぜ!!」
さも楽しそうに、迅君が言う。
……迅君にとっては、殺し合いすらも楽しいのだろうか。
私は殺し合いなんて本当はしたくない。
……けれど、迅君と今からやることは、殺し合いなんかじゃない。
どちらかが勝って、どちらかが負ける……いわば格闘ゲームみたいなもの。
そこに、敗者は生まれても、死者は生まれない。
互いにどこまで加減をすればよいかわかっている……けれど、全力で挑む。
そんな、最高の舞台なのだ。
「はい……踊りましょう! 今夜は私達を照らすのにちょうどいい月の光もあります。ですから……私達は踊り子なんですから!」
「いいぜいいぜ! ノッテきたぜ! こんな日が来るとは俺も思っても見なかったことだけどよ……あの日と同じように、この舞台で華麗に踊ろうぜ!」
「はい! あの日と同じように……今宵は本当に、楽しい舞台です!」
そして私達は踊り始める。
私達にとってはこれが最後。
これが……最後の殺し合い。
Side葵
「くっ!」
駄目だ。
相手が多すぎる。
あの後作戦実行のために、精霊山にやってきた私達だったけど……今私は敵に囲まれていた。
数が多い。
これだけの数を相手にしなければならないなんて……なんて大変なことなのだろう。
「数が多いな……これじゃあキリがない」
「そうだね……きゃっ!」
私は背中合わせの状態で、同じ部隊の男の人と話していた。
すると、横から黒い玉が飛んできて、慌ててそれをしゃがんで避けた。
「……危ない危ない。って、え?」
慌ててよけたかと思うと……いつの間にか目の前まで敵が迫ってきていた。
「うわっ!」
その敵は、私に剣を突き刺そうとしてきた。
なので、背後にいる男の人にも言って、それぞれ別の方向に逃げる。
そうしたことで……今まで保たれてきた平衡が、脆くも崩れ去ったのだった。
「くっ! ここは一旦退くぞ! ……がはぁっ!」
「!?」
逃げようとしたところを、敵の銃弾が襲う。
「くぅ……せめて光の力が使えればいいのに」
「ご、ごめん……私が力を使えないばっかりに」
「いいや、いいんだ。俺の力が及ばないというのもあるし……第一、来たばっかりの奴に光の力を使えったって無理な話しだしな……誰の責任でもないさ」
……本当は、分かってる。
こんな状態に陥ったのだって、私の責任だってことを。
……私が何もできないばっかりに、こんな状況を作ったりして。
結局私は、誰も守ることができないのか。
このまま……私は帰れずに、倒れるのか。
「……そんなわけには、いかない」
ここで倒れたら、瞬一と会えなくなる。
そんなの……絶対に嫌だ。
そんな人生、真っ平ごめんだ!!
「私は……勝つ。勝って、元の世界に帰るんだ!!」
「!? ……こ、これは!?」
叫んだ瞬間。
私の身体を、謎の光が包み始めた。