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Magicians Dream  作者: ransu521
第一部 光の器と闇の軍勢
18/139

18,存在

Side 麻美


「……行きます!」


私は手に持つ剣を構え、突っ込んでいく。

迅君は……そんな私をただ悠然と待ち受けているだけ。

……その表情には、どこか余裕も見受けられた。


「ハァッ!」


ガキン!

響くのは、鎌と剣がぶつかり合う音。

私の剣と、迅君の鎌が……力比べしている音。


「一人前に力だけはつけてやがる……これも光の器(てんし)としての力なのか?」


迅君がそんなことを呟くけど……確かにそうなのかもしれない。

今こうして迅君と渡り歩いていけるのは、私の中に眠る力のおかげ。

私自身が別段努力することなく身に付けた……特別な力。

迅君のように、悩んだ末に手に入れた力なんかじゃない。

……しかも、迅君にこんな力を手にさせてしまったのは……私の責任なのだ。

だから、そんな私に……決別する。

そう言う意味でも、この戦いは意味をなしているのだ。


「おらおらどうした!? お前の実力はこんなものなのかよ!!」

「くっ……」


けど、単純な力の差で言えば私の方が下。

明らかに力不足……経験不足。

勝てるはずがない……光の器(てんし)の力なんて所詮お飾りでしかない。

迅君と戦うには……私だけでは本当に実力の差がありすぎる。


「……セィ!」


上から振り下ろされる鎌を、私は剣でギリギリの所で受ける。

けど……ちょっとでも力を緩めれば、頭から真っ二つになることだろう。


「そっちばっかり集中してっと……こっちの攻撃に対して盲目になるぞ!」

「へ? ……キャッ!?」


迅君の声が聞こえてきたかと思えば、私はいつの間にか目の前に現れてきていた黒い玉を発見した。

しかし、見つけられた所で……避けることは不可能だった。

その攻撃を受けた私は、壁まで吹き飛ばされる。


「痛っ……」


背中が痛い。

壁に打ち付けられたのだから……背中に痛みが走って当然なのだけど、痛い……。


「……壁に叩きつけられたくらいでそんなになるなんてな。やっぱり女であるお前は……弱いな」

「……分かってます。今の私が真正面から迅君に挑んだ所で、勝てるはずがないんです……」


ゆっくりと、背中に走る痛みに耐えながら、私は何とか立ちあがる。

そして、迅君をじっと見つめる。

……やはり見える、不敵な笑み。

駄目だ、私なんて眼中になさそうだ。

口元は笑っている癖に……眼が笑っていない。


「……」


悔しい。

迅君に見向きもされないのは……本当に悔しい。

認めてもらいたい。

私は……私にとって迅君は、もっともそばにいて欲しい存在。

隣にいて欲しい存在……。

そんな存在であると同時に、私にとっては帰るべき場所であった。

けど、そんな場所は、今では違う。

私が帰るべき場所は天上界(エンジェルフィールであり、迅君の帰るべき場所は……堕落世界ダークサイド

私達は、同じ場所に立っているようで……違う道を歩み始めているのだ。

そんな迅君だけど……私のことを敵とも思っていないのは、悔しい。

決別しなければいけないのに……倒さなくてはいけないのに。

けど、最後の最後で……私の『想い』が邪魔をする。

迅君に認めてもらいたいと言う想いが……私の決心を鈍らせる。


「ただでさえ弱いのに、決心が鈍るなんて……私は相当、心も身体も弱いんですね」

「……安心しろ。安らかに眠らせてやる。ここにいる奴らも……いずれは帰るべき場所に帰してやる」


……ここを追放されたら、もう私達が行きつく先は……ない。

それは『死ぬ』よりも辛いこと……存在を『消される』ということを意味する。

私にとっても、迅君にとっても。

今ここで『死ぬ』ということは……その存在を『なかった』ことにされるのと同じ。

出来るなら、私はまた、迅君と共に生活していきたい。

……けど、魂しか残っていない私達が元の世界に帰ることは、出来ない。

だから、ここで決着をつけなくてはならない。

……迅君と、そして、自分と。


「……帰るべき場所は……私にとっての帰るべき場所は、ここなんです。ですから……私はここで倒れるわけにはいかないんです……私の居場所を守る為にも、私はここで……勝ちます!」

「何の力もない奴が……そんな決意を固めるんじゃねえよ。そんな表情されると、ますます殺しにくくなっちまうじゃねえか……」


鎌を握ったまま、迅君はこちらをジッと眺める。

……そして迅君は、その鎌を上に思い切り振り上げて……。


「せめて楽に逝かせてやるよ……アバヨ、寺内。お前と一緒に過ごした日々を……俺は忘れない」


私の頭の上から……一気に鎌を振り下ろした。

その時だった。
















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