14,タイムリミット
鍛錬をすること、およそ数時間。
「ハァハァ……出来ない」
「ハァハァ……これ以上は、無理、です……」
結局、私達は光の力をうまくコントロールすることが出来なかった。
それはおろか、引き出し方すら理解出来なかった。
「全然駄目です……使い方も分からないんじゃ、コントロールのしようがないです……」
「本当に、光の力ってどうやって使うんだろう……」
思わず座り込んでしまう私達。
けど、これだけやっても使い方が分からないんだもの。
先は随分と長くなりそうだ。
「……ハァ。このままじゃ私、元の世界に帰れないよ……」
「が、頑張りましょうよ! きっと私達でも出来ますって!」
「……うん。私達にはその力が身体の奥底に眠ってるんだもん。出来ないわけがないんだよ……けど、方法も教えてもらってないのに、一体どうやって力を引き出せって言うんだろう……?」
せめて教えてくれるような人が身近にいればよかったんだけど……。
アルカ様に聞くのが一番早いんだろうけど、多分アルカ様は教えてはくれないだろう。
それも試練ということで……アルカ様は一切関わってくれないと思う。
「困りました……どうすればいいんでしょう?」
「う~ん……誰か身近の人で聞ける人がいればいいんだけど……」
悩む。
今の私達に出来るのは、それしかないのだから……とりあえず、この後どうするべきかを悩む。
だが、時間はそう待ってはくれない。
どんどん時間だけが流れていく。
「……駄目だ。何も思いつかないよ」
「……今日はとりあえず戻りましょう。そして仕切り直しです」
「そうだね。それが一番だと思うよ」
私達は一旦塔に戻って、ゆっくり休んでからまた明日訓練をしてみることにした。
Side由雪
「さて、攻め込む日時の確認は結構か?」
「……ああ、別に問題はねぇぞ」
「相変わらずだな由雪……その返事はどうにかならないのか?」
「別に」
ったく、面倒くさい。
何が攻め込む日時だよ。
やるならとっととやる、やらないならとっとと引き上げるとかしてくんないと……この世界の光に当てられてどうにかなっちまいそうだ。
それに、この世界にも夜は一応あるが……ここの夜は駄目だ。
光が混じった闇なんて、もはや闇なんかじゃない。
薄らと、夜の中に光を感じるのは……とてもじゃないが気分がいいものではない。
ここの夜は、月があまりにも綺麗過ぎる。
その光を抑えることを知らないのかよ……まったく。
「お前は別働隊として……というか個人的に行動してもらう。お前の力は強大だからな……個人で動いてもらった方が効率がよいだろう。他の者を連れてけば、そいつが足手まといになるからな」
「……助かるな、そっちの方が。俺は今更、お前らと仲良くやる気はねぇからな」
「……作戦実行は翌日の深夜だ。それまで各自身体を休めるように」
いくら堕落世界に堕ちた奴らとはいえ、元は人間。
つまり、俺が嫌いな奴らばかりということになる。
他人は……他人が近づくことを俺は好まない。
今が一番いいのだ……俺にとっては、こちらの方が心地がいいのだ。
けど……ひとつ心残りがあるとすれば。
「……寺内」
寺内がいるこの世界を奇襲しなければならないということだ。
俺にとって寺内は……あれ、一体何なんだ?
唯一の拠り所? ……違うな。
俺には拠り所なんて必要ないからな……そうじゃないのか。
けど、何故なんだ?
普段の俺なら、誰が死のうが生きようが関係ないというのに。
どうして……どうして……。
寺内の時だけは、生きていて欲しいと感じるのだろうか?
そして時は静かに動き出す。
世界と世界の存続をかけた、大きな戦いが、始まる。