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Magicians Dream  作者: ransu521
第三部 アンジック・ウイルス
138/139

29,決着

「「……」」


互いに動かない。

その場に立ち尽くしたまま、二人は動こうとしなかった。

否、動けなかった。

今すぐ追撃を行いたい、しかし魔力は底を尽きかけている。

やがて葵の方は……制限時間も過ぎてしまい、そのまま元の姿に戻ってしまった。

それこそが、葵の負けた証だった。


「ふ……ふははは……ヒャアハハハハハハハハ! 勝った! 光の器(てんし)に勝てたんだ! 忌々しき対を為す存在との戦いに、とうとう勝てたんだ!!」


一人舞い上がる勝弘を前に、葵は絶望を感じていた。

自分は……全力を出しても目の前の敵を倒すことが出来なかった。

その事実は、彼女の頭の中でグルグル渦巻いていた。


「………おい」

「うん?」


だが、葵の失敗を打ち消すかの如く、刀を出現させた瞬一が勝弘目掛けて走ってきて……そのまま心臓に近いところに刀を刺す。

そしてその傷口から電流を流し、勝弘はかなり苦しそうな声をあげて……気絶した。


「……これで、完璧に終わったのか?」


しばらく静寂の時間が過ぎた後で、晴信がポツリと呟く。

終わりにしてみれば、実にあっけない終わり方だった。

誰もが想像していなかった幕の閉じ方だっただろう。

しかし、何がともあれ、これにて今回の事件は、幕を閉じられたのだった。


「どうする? コイツ」


晴信が大和達に尋ねる。

すると大和と大地が動きだし、


「後は僕達がやるよ……そうだ。一時的に吉沢茜を釈放してもらうことにしよう。彼の話だと、吉沢茜は薬を作ることが出来る数少ない人物らしいし」

「いいのか? 前にその案を出した時には、お前達は力がないから無理だとかの話だったけど……」


瞬一がそう尋ねると、大地は決意を秘めたかのような表情で、こう言った。


「前までは無理だと思っていた。事実俺達は下っ端のような存在だからな……話すら聞いてくれない可能性がある。けど、やってみなくちゃ分からないよな……何事もやってから言わないとな」

「大地……」

「そういうわけだよ。だから僕達は下柳を『組織』に連れて行くついでに、交渉してみるよ」

「ああ、頼んだぞ」


勝弘のことを大和・大地に任せて、瞬一達は葵の元へ駆けつけた。


「大丈夫ですか? アオイ!」

「う、うん……なんとか大丈夫……だよ……」

「そんな無茶をするからですのよ! 葵先輩は少しは自分の身体のことも考えてくださいまし!」


心配するようにそう言うのは、アイミーンに千世だ。

晴信はそんな彼らを見守っているし、月夜は葵の頭を優しく撫でていた。


「お疲れ様、葵」

「最後に決めたのは結局瞬一だったね……今回はおいしいところ持っていかれちゃったな……」

「何言ってんだよ。今回のはお前の手柄だっての」


笑いながら、瞬一と葵はそんな会話をかわす。

こんな光景……つい数分前までは想像も出来なかったことだ。

しかし、葵は宣言通りに生きて帰ってきた。

約束は、果たされたのだ。


「それじゃあ約束を守ったということで、今度の日曜日に二人でデートしない?」

「「「で、デート!?」」」

「うおっ!? 耳元で叫ぶなよ……ってか葵、デートってどういうことだよ!」

「言葉通りの意味だよ?」


顔を赤くして叫ぶ瞬一に、葵はケロッとした様子でそう言い放つ。

これには、月夜・千世・アイミーンの三人は……怒っている様子だった。


「いや、これは葵が言いだしたことであって、俺は……」

「「「問答無用!!」」」

「俺は何も悪くねぇ!!」


その言葉を最後に、瞬一は三人に天誅を下されることとなるのだった……。
















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