24,光の器、解放
「迎え討て……哀れなる侵入者共を我が手で撃ち滅ぼせ!!」
「迎撃態勢、用意」
「あ、アイミー!?」
先行したのは、アイミーンだった。
まっさきに動き出し、相手に攻撃を仕掛けようとする。
……だが、相手の攻撃は、全体攻撃だった。
「単体で突っ込むことこれすなわち無価値に候……我は闇を操る者なり。その力、唯一の光を持ってしか撃ち滅ぼすことは不可能……!!」
「闇を操る者……? まさか、コイツもすでに悪魔と契約を交わしたとでも言うのか!?」
晴信が叫んだ瞬間。
辺り一面に、黒い筋みたいなのが飛び交う。
「全体的に攻撃しようと思っていたが、つっこんでくると言うなら話は別だ……まずはその愚か者から殺してやる……さらばだ、王女」
「……守護、抱擁……!!」
瞬間。
黒い筋は、一気にアイミーンに向かって放出される。
だが、アイミーンはその場から動かず……ただ一言、そう呟いたのみだった。
けれども、攻撃を避けるのであれば、今の一言で十分だった。
「なっ!?」
アイミーンの足元より魔法陣が出現。
そこから現れてきた風の壁によって、勝弘の攻撃はすべて弾き飛ばされた。
「なるほど……さすがは王女だ。この程度の魔術など簡単に避けられてしまうか」
勝弘は、アイミーンに攻撃を避けられたことに対してそう反応をとる。
当の本人であるアイミーンは、何も言わない。
「可愛げのない少女だ……だが、我の相手をするには感情など無意味だ。愚かな者の行う末路とでも言うべきであろうか。人間は勝とうという感情を抱くから負ける。ならばはじめから勝てるだけの絶対的な力を持っていれば……勝とうだなんて思わなくなる。我はそれを手にした。今だからこそ、誰にだって負けぬ。我を動かす力は、『勝とう』などというあいまいなものではなく、『負けない』という絶対的な力なのだから!!」
「……その言葉、明らかに矛盾してるよ」
「……え? 細川、先輩?」
「あ、葵……何を……」
千世が驚いて後ろを振り向いてみれば……そこには光に包まれた葵の姿があった。
アイミーンはそんな葵に驚き、そして咄嗟に勝弘の目の前からどいた。
一直線上にいるのは……葵と勝弘のみ。
いや、この場合……光の器と悪魔のみという表現をしても間違いではないだろう。
「この力……まさか……!!」
「そうだよ。私は光の器の力を引き継いだ者。本来なら解放してはならない禁忌の力だけど……悪魔にとり憑かれた人を助ける為なら、この力、惜しげなく使えるよ!」
「葵……お前……」
「大丈夫だよ。前までの私とは違うもん。時間こそ短いけれど、力を操れるから。だから見てて……私があの人を倒す所を……その目できちんと確認して」
「……分かった。お前達も手だしするんじゃねえぞ。ここからは……葵とアイツの戦いだ」
瞬一は、晴信達にもそう指示を出す。
大和と大地は若干不満そうな表情を浮かべていたが、構わず後ろに下がらせた。
「いいぞ、葵……思い切りやっちゃってくれ」
「ありがとうみんな……これは、由雪君のような人が生まれない為に私がやらなければならない、使命みたいなものだから」
葵は、真剣な表情を浮かべてそう宣言する。
……瞬一達は、いつも以上に真剣な表情を浮かべる葵を見て……息をのんだ。
「そうか……そちらにはそんな存在までいたか……どこまでも我らの邪魔をする、対をなす存在」
「覚悟しなさい、闇に囚われし哀れな悪魔よ……必ず、成仏させてあげるから……!!」
瞬間。
葵の背中より……光の羽根が生えてきた。