23,制裁
「……科学魔術が、その存在がお前をここまで駆り立てた理由だというのか?」
瞬一が尋ねるようにそう言った。
すると勝弘は、
「その通りだ。『アンジック』なんてコンピュータウイルスをつくるきっかけを作った、科学魔術の存在が憎いんだ……更にはそんな背景を知らずに科学魔術を使用している輩が、俺は許せない。それが使えるようになるまでの裏側で、一体何が起きていたのか分かってるのかよ……分かってねぇのに、勝手にその便利さを享受してんじゃねえよ……科学魔術だってな、俺の両親が入っていた研究チームが作ったものなんだぞ?」
「……え?」
アイミーンだけじゃない。
他のメンバーも、勝弘の言葉に驚いていた。
だが、勝弘はそのことを気にすることなく、言葉を繋げる。
「何も知らずに科学というものを人間は享受してきた。その背景でたくさんの犠牲が伴っていることをしらずに、ただ単に便利だからという理由でそれを利用し続けた。俺は何も知らずに生きている人間達を、たまらなく憎むようになっていた。お前達が科学魔術を利用できるのは……俺の両親の犠牲があったからなんだぞ? ……やがて俺は、全人類に制裁を与えることにした。その理由がお前達に分かるか?」
「……分からない」
勝弘の問いに、瞬一はそう言葉を返すしかなかった。
何故なら、本当にその理由を知らなかったからだ。
勝弘が何故ここまでのことをするようになったのか。
そしてその先に……何を望んでいるのだろうか。
やがて勝弘は、重い口を開いた。
「すべては、怠慢している人類に制裁を加える為だ。科学なんて便利な代物が生まれてからここ数年、人類は何の努力もしなくなった。新たなものを作るわけでもなく、ただ同じコピーを作ることの繰り返し。これでは何の意味も為さない……俺の両親が命を懸けてまで開発した科学魔術だって、その後何か変化した点が見られたか? 答えはNoだ。何故なら、それが最高傑作だと唱われているからだ。さう言われると、人間というのはその先を望むことを忘れる。進化することを忘れてしまうんだ。いや、ある意味では進化している点もある。だが……それは退化を意味することすら容易だった。俺の両親は、人類が堕落してしまうが為に科学魔術を開発したんじゃない……少しでも便利になって、その先を目指してもらうが為に作り出したんだ。それを人類は……蹴り飛ばした。最初からそんなことは知らないというような顔で過ごしてやがる……そんなに楽しいかよ。科学にまみれたこの世界で暮らしていくことが、そんなに楽しいかよ!」
そして、勝弘はとうとう魔術を唱え始めた。
瞬一達は、それを見て臨戦体勢をとる。
「まったく……全国的な対外戦争すら視野に入れた作戦だったと言うのによ……その計画も、おかげで無意味になってしまいそうだ!!」
「来るぞ!!」
勝弘が瞬一達目掛けて突っ込んで来たところで、最後の戦いが始まる。
彼の人類に対する制裁を、終わらせる為に。