21,男の決断
「なるほど……全然接点がなさそうに見えるお前がそのことを知ってるとはな……どうして知った?」
「……光の器の力をうまく操ることが出来るように修行をしていた日のこと。由雪君達が攻め入ってきた時に、寺内さんから直接話しを聞いたの」
「ほぅ……エンジェルフィールに言ったことがあるというわけか」
「……」
男の問いに、葵は答えない。
もう充分質問には答えたというような表情を浮かべていた。
「そうか……ならなお更残念だ。これから俺達は、そんな貴重な存在を倒さなければならないということになるんだからな―――!!」
「く、来るぞ!!」
四方から同時に攻めてくる男達。
瞬一は、まず刀を出現させると、そのうちの一人の攻撃をかわす為に相手の攻撃に合わせる。
瞬一・アイミーンは右からの、晴信・月夜は左からの、葵は正面からの、千世は背後からの敵の迎撃に向かう。
「雷よ。我が剣に宿せ!」
「荒れ狂う波のうねりよ、彼の者を飲みつくせ!!」
瞬一は、己の刀に雷を溜めて……それを横に一閃することで一気に放出する。
同時に、相手の攻撃が瞬一達めがけて襲い掛かってくる。
……それは明らかにその場にいる全員を巻き込もうとする勢いだった。
「そんな攻撃……雷に大しては意味がないな!!」
ザン!
瞬一の攻撃が波を斬り、波は跡形もなく消えて行った。
……だが、それと同時に相手も消え去っていた。
「なっ!? 何処行った……?」
「上です! シュンイチ!!」
「上だと!?」
慌てて上を見上げてみれば、ドリルみたいなものを持ちながら、瞬一の頭上目掛けて突っ込んでくる男の姿が見えた。
それを確認すると、アイミーと瞬一はそれぞれその攻撃を避ける。
その後で、
「捕縛……氷!!」
相手が地面に着地したその瞬間を見計らって、アイミーンが捕縛の魔術をかける。
地面に水色の魔法陣が出現し、そこから出現した檻により、男の身体は閉じ込められた。
「な、何だこれは!?」
「今です、瞬一!!」
「おうよ! 我に抗う者に、神より賜りし聖なる矢にて、彼の者に静かなる苦しみを与える!!」
そう叫んだ瞬間。
瞬一の目の前に黄色の魔法陣が現れて、そこから弓と矢が現れてくる。
それを手にして、瞬一は弓矢を相手に向けて構える。
「ひっ……!!」
「あまり俺達を見くびってもらっては困るって話だ……スパークロア!!」
瞬間。
瞬一の放った矢が、相手の身体を確実に射抜いていく。
身体を矢で射抜かれる痛みと、雷による身体の痺れが同時に発生して……男はその場に気絶した。
「よし、こっちは終わった! そっちはどうだ?」
とりあえず縄を出現させて男を縛り上げた瞬一は、晴信達にも確認をとる。
すると、
「こっちは終わったぜ?」
「そうか、ご苦労さん!」
晴信・月夜の二人は、すでに戦いを終えて相手を縛り終えていた所だった。
千世に至っては、問答無用で斬りつけた後があるが……一応気絶しているのみらしい。
「……見くびってた。お前達がそこまで強いとは思ってもみなかった……」
先ほど瞬一が電話に出ることを許した男が、思わずそんなことを呟いていた。
「だから言ったろ? 後で後悔しても知らねぇぞってな」
不敵な笑みを浮かべながら、瞬一が葵と対峙している男の方へとゆっくり歩みを進める。
他のメンバーも同様だ。
……男は、さすがにこれは人数の差が激しすぎることを悟り、
「……分かった、俺達の敗北だ。お詫びに、リーダーがいるところまで案内してやる」
瞬一達に、そう告げたのだった。